プロジェクトに欠かせないQCDFとは?優先順位や改善方法を解説
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最終更新日:2023年10月11日 / 投稿日:2023年10月11日
システム開発の現場で「QCD」や「QCDF」などの言葉を耳にすることもあるでしょう。QCDFはシステム開発以外に生産現場などでも利用され、重要視される要素です。QCDFの向上を目指せば、商品の品質向上や利益率の向上、業務の最適化などさまざまなメリットにつながるため、QCDFについて理解を深めることは大切です。
当記事ではQCDFとは何かを説明した上で、改善方法やQCDFの中で何を優先すべきなのか詳しく解説します。システム開発に関わる方は当記事をぜひ参考にしてください。
1.QCDFとは?
企業の生産活動において、重視される4つの要素としてQCDFがあげられます。QCDFとは、生産プロセスや開発・プロジェクトなどの現場で念頭に入れるべきとされている「品質・コスト・納期」の3つに柔軟性を加えたものです。
Quality(品質)・Cost(コスト)・Delivery(納期)・Flexibility(柔軟性)のそれぞれの頭文字を取って、QCDFと表記されます。生産活動でQCDFを意識し、改善に取り組むと、商品の品質向上ひいては自社の利益率向上が期待できます。
QCDFの基本目標は、コストを抑えつつ、高品質な製品を素早く届けることです。まずは、4つの要素がそれぞれ何を表しているのか解説します。
1-1.品質(Quality)
システム開発の場合、品質は顧客ごとに認識が大きく異なります。品質の最低条件として、提供するソフトウェアに不具合がないことが求められます。しかし、正常に動作さえすれば顧客からの高評価につながるとは限りません。
ソフトウェアの評価は、開発を発注する直接の顧客のみにとどまらない点が特徴です。たとえばショップのアプリを開発する場合、顧客である企業に加えて実際に使用する会員・ユーザーからの満足度も評価に加わります。
正常な動作に加えて、エンドユーザーも含めたすべてのステークホルダーが満足する快適性や利便性を追求することが、システム開発における品質管理です。
1-2.コスト(Cost)
システム開発に関わるコストは、大きく分けると下記の3種類です。
- システム開発費
- プロジェクト管理費
- 間接的に発生する費用
設計やプログラミング、テストなど一連の開発作業で必要となる人件費が、システム開発費です。プロジェクト進行や品質を管理するために生じるコスト全般は、プロジェクト管理費に該当します。オフィスのレンタルや機器の導入、顧客との打ち合わせ時に生じる交通費などの雑費が、間接的に発生するその他の費用です。
コストの大部分は、開発に関わるエンジニアの人件費が占めます。開発期間が長引いたりテストにかける工数が増えたりした際にコストが膨れ上がる要因を理解して、業務効率化など適切な改善案を考える必要があります。
1-3.納期(Delivery)
プロジェクトの規模によって、かかるコストや納期は大きく変わります。しかし、基本的な開発の流れは変わりません。各プロセスでどの程度の開発期間や費用がかかるのかを正しく算出できれば、適切な納期を設定できます。
プロジェクトごとに大まかな納期の目安をあげると、小規模で1~2か月程度、中規模で3~4か月程度、大規模で半年程度です。納期を短縮するためには、要件定義の段階で顧客と入念に打ち合わせることが重要です。
開発するソフトウェアの内容によっては、一度にすべてを仕上げるのではなく、優先順位を決めて段階的にシステムを完成させるアジャイル開発も検討します。
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1-4.柔軟性(Flexibility)
近年のシステム開発では、柔軟性が重要視されます。突然の仕様変更や事業・ニーズの変化など、開発初期に想定していなかった事態が起こったとき、柔軟に対応できなければ、前述の品質・コスト・納期の3要素をクリアできません。
指示や要望へ素早く対応できるような柔軟性があれば、限られたリソースの中で満足度の高いシステム開発ができます。
2.QCDFとよく似たその他の用語
QCDには、QCDFの他にもさまざまな派生語があり、業界によって重視する要素が異なります。
ここでは、代表的なQCDの派生語を6つ紹介します。
・QCDS
システム開発の現場では、顧客対応および製品の付加価値を表すServiceが該当します。建築施工業界においては、Sが安全性をさすSafetyに置き換わります。
・QCDE
環境を表すEnvironmentが加わった派生語です。ソフトウェアの運用にともない発生する環境負荷を、製造工程の中で最小限に抑えることを意味しています。建築施工業界や製造業では、生産性向上につながる職場環境の改善をさします。
・QCDSE
SafetyとEnvironmentの2要素を加えた派生語です。完成した製品を安全に使用できることはもちろん、製造工程においても安全性や環境面を意識した生産管理が求められます。
・QCDRS
QCDSにRiskを表すRが加わっています。SにはServiceとSafetyのどちらも含まれている点が特徴です。ソフトウェア開発の場では、付加価値や安全性、環境負荷の軽減を検討するときの判断基準として、リスク面の考慮も求められます。
・QCDDM
開発を表すDevelopmentと、経営を意味するManagementが加わった派生語です。開発現場よりも、主に発注側がサプライヤーを選ぶときの判断基準として用いられることが多い5要素です。
品質・コスト・納期それぞれの向上や改善は、本来相反する目標であり、実現は困難です。サプライヤーは品質やコスト、納期に倫理的な決定を行い、ときには顧客へ説得力のある言葉で交渉できる開発力・経営力が求められます。
3.QCDFの優先順位は?
理想はQCDFすべてをバランス良く向上させることですが、現実的には、相反する関係性にある4つの要素を同程度に向上させることは困難です。
経営戦略の基本として、まずは品質を最優先しましょう。顧客が価格重視での開発を求めても、最低限の品質がなければ製品に満足してもらえません。コストと納期の優先順位は、状況によって異なります。
コストと納期のどちらを優先するか決めるときの判断基準は、下記の通りです。
コストを優先すべきケース |
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コストが高く、生産効率の向上を阻害している場合は、余分な費用や工数がないか見直しを優先すべきです。納期を無理に短縮すると製品開発に支障が出る可能性がある場合も、取り組みやすいコスト改善を優先します。 |
納期を優先すべきケース |
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顧客が製品を使用する日や、正式にリリース日を発表している場合は、納期を優先しましょう。多少コストがかさばっても、納期を遵守したほうが顧客満足度を高められます。 |
基本の考え方はQCDをベースとして、柔軟性をプラスアルファの要素とします。品質を求めつつ、必要に応じて価格や納期の交渉、業務改善など柔軟に対応できれば、バランスの良いQCDFの向上につながります。
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4.QCDFの改善方法
QCDFを向上させるためには、入念な下準備にもとづいた改善策の提案が重要です。具体的かつ実現しやすい改善策を提案するコツとして、「現状の把握」「改善方法の選択」「検証」の3つのステップがあげられます。
現状の把握 |
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まずは品質・コスト・納期それぞれの現状を把握することが大切です。どのような課題があり、どのような影響が出ているか把握すれば、効果的な解決策が見つかります。現状についてもっとも情報を握っている人物は、現場で直接開発に関わっているスタッフです。聞き込みを行い、課題を徹底的に洗い出しましょう。 |
改善方法の選択 |
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整理した現時点での課題に対して、どのような解決策を試すのか検討します。改善方法を決めるときのポイントは、客観的に評価しやすい目標を立てることです。「クレームが減った」など曖昧な指標ではなく、何%削減を目指すのか明確にすると、次のステップである検証も正確に行えます。 |
検証 |
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実践した改善方法が、品質・コスト・納期それぞれの項目で、どのような効果を出したのか検証します。ビフォー・アフターが瞬時に分かる表やグラフを用いて、関係者全員に結果をシェアしましょう。結果に対して再び課題を洗い出し、次の施策を模索します。 |
QCDFの改善に取り組むときは、現場の意見にも耳を傾け、改善策に取り入れましょう。開発者側の視点も参考にすることで、実践しやすい改善策の提案や業務内容の最適化につながります。
まとめ
QCDFとは、生産現場や開発・プロジェクトの進行時に重視される「品質・コスト・納期・柔軟性」の4つの要素のことを指します。QCDFの向上に取り組むと品質向上や利益率の向上を目指せるものの、4つの要素すべてを同時に改善することは非常に困難です。実際の開発現場では優先順位をつけ、品質を最も重視した上でコストと納期のバランスをはかりましょう。
QCDFを改善する際、業務をどのように効率化させるかが課題となります。テスト自動化ツールなどを取り入れ、業務内容を最適化させましょう。