最終更新日:2024年04月09日 / 投稿日:2024年03月26日

システムやソフトウェアの開発においては、ほとんどの場合どのような手順で作り上げるかを定める「開発プロセス」が取り決められます。開発プロジェクトを管理し、納期遅れなどを防止するためにも開発プロセスの策定は大切です。複数の種類がある開発プロセスのそれぞれの特徴を知り、これから始めるプロジェクトに適したものを選びましょう。

この記事では開発プロセスの基本的な流れや目的、代表的なソフトウェア開発プロセスの種類のうち4つのメリット・デメリットを解説します。

 

1.ソフトウェア・システムの開発プロセスとは

ソフトウェア・システムの開発プロセスとは

開発プロセスとは、ソフトウェアやシステムを完成させるまでの「工程」を明確化したものです。例えば、料理における工程には、レシピを決める、買い物に行く、調理をする、などが挙げられます。同様に、開発プロセスでは要件定義や設計、開発という各工程を定め、現状の進捗管理を容易にしたり、品質を一定に保ったりすることを狙います。

多くの人と時間を要するソフトウェア・システム開発において、開発プロセスの策定と実行はプロジェクトを計画的かつ効率的に進める上で不可欠です。

ソフトウェア開発とは?ソフトウェアの種類や開発の流れを解説

 

1-1.開発プロセスの基本的な流れ

開発プロセスの基本的な流れ

ソフトウェアやシステムを開発するプロセスは、一般的に以下の5工程に分けられます。

1要件定義
2設計
3開発
4テスト
5リリース

「要件定義」とは、システム開発者と依頼者の打ち合わせによって、システムに搭載する機能や運用方法などを決めることです。要件定義でしっかり擦り合わせしていないと、途中で仕様変更があったときに、スケジュールや費用に影響を及ぼすリスクがあります。

次に、要件定義をもとに、システム設計者が設計を行います。設計には、見た目やデザインなどの「外部設計」と、機能や動作といった「内部設計(詳細設計)」の2種類があります。外部設計は、ユーザーの使い勝手に直結するため、慎重に検討が必要です。外部設計は「基本設計書」、内部設計は「詳細設計書」にまとめます。

設計書をもとにプログラミングによってシステムを構築するのが開発段階です。システムが正常に稼働するかどうかを複数のテストで判断します。まずモジュールごとの「単体テスト」を実施し、システム全体の「結合テスト」に移るのが一般的です。そのほか、要件定義通りの仕様であるか判断する「システムテスト」、ユーザーの使用環境で動作を確認する「運用テスト」も行います。各テストで問題がなければ、納品とリリースがされます。

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2.開発プロセスを定義する目的・役割

開発プロセスを定義する目的・役割

ソフトウェア・システム開発において、開発プロセスを定義し、その通りに実行していくことは、プロジェクトを効率的に進めるために重要です。開発プロセスには、具体的に以下のような目的・役割があります。

・チーム内で認識を統一できる

システム開発は、プロジェクトチームによって行われるのが一般的です。複数人で役割分担をして作業を進める場合、成果物のイメージや各工程などについて共通認識を持っておくのが重要になります。開発プロセスを定義することでチーム内での認識のズレを解消し、スムーズに作業分担ができるでしょう。また、依頼者や利害関係者との関係においても、開発プロセスの策定により認識を統一できます。

・納期遅れを防ぎやすい

開発プロセスを定義すると、詳細なスケジュールを組みやすくなります。最終納期を定めただけでは、各プロセスにどのくらいの期間がかかるか不明瞭です。そのため、仕様変更やトラブルが起きた際に、納期遅れのリスクがあります。開発プロセスを定めれば、最終納期から逆算して、工程ごとの期限を定めることが可能です。進捗状況も分かりやすく、スケジュール管理や調整もしやすくなるでしょう。

・プロダクトの品質を一定に保てる

開発プロセスでは工程ごとに確認やレビューの機会を設けます。修正工数が増えたり、後工程に進んでから改善点に気づいたりする可能性を減らせるほか、異なる角度から細かく検討を重ねることでプロダクトの品質向上につながります。

・過去の知見を蓄積しやすくなる

開発プロセスの枠組みに沿って開発を進めることで、次に同じプロセスで開発を進める際に過去の経験値を活用できます。回数を重ねるごとに、開発工程でつまずきやすいポイントや各工程にかかる期間などが体系化されるため、失敗の確率を減らせるでしょう。

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3.代表的なソフトウェア開発プロセスの種類4つ

ソフトウェア・システムの開発プロセスには、さまざまなモデルがあります。ここでは、代表的なモデルとして、ウォーターフォール開発・アジャイル開発・スパイラル開発・プロトタイプ開発の4種類を紹介します。

 

3-1.ウォーターフォール開発

ウォーターフォール開発とは、要件定義→設計→開発→テスト→リリースまでの一連のフローを、上流工程から下流工程に向かって進める方法です。「Waterfall(滝)」の名の通り、基本的に前工程に逆戻りすることはせず、1つの作業工程が完了してから次の工程に進みます。最も基本的な開発手法とされており、日本企業でもポピュラーな方式です。

ウォーターフォール開発のメリット・デメリットは以下の通りです。

ウォーターフォール開発の
メリット
  • スケジュールを組みやすく、管理しやすい
  • 予算が立てやすい
  • 品質の担保がしやすい
ウォーターフォール開発の
デメリット
  • プロジェクトが長期化しやすい
  • 仕様変更が難しい
  • ミスが発覚すると予算超過や計画遅延が起きやすい

ウォーターフォール開発では、初期段階で全体の計画を立て、それに従ってプロセスを進めます。そのため、工程ごとの工数を正確に見積もることが可能です。一方で、作業ミスやトラブルが発生した際は、課題を解決するまで次の工程に進めません。

ウォーターフォール開発は一般的に仕様変更の少ないシステムに向いています。また、品質が重視される開発プロジェクトや、大規模な案件にも適していると言われています。

ウォーターフォール開発とアジャイル開発の違い|それぞれの特徴も解説

 

3-2.アジャイル開発

アジャイル開発は、システムを機能ごとに細分化し、それぞれで計画→設計→開発→テスト→リリースのサイクルを繰り返す手法です。依頼者と密にコミュニケーションを取りながら進めるのが特徴で、作業を反復することで品質を上げていきます。

アジャイル開発のメリット・デメリットは以下の通りです。

アジャイル開発の
メリット
  • リリースまでの開発期間を短縮しやすい
  • 依頼者との食い違いが発生しにくい
  • 仕様変更に臨機応変に対応できる
アジャイル開発の
デメリット
  • 全体のスケジュール確認・管理が難しい
  • システムの整合性にずれが発生しやすい
  • 要件が収束しないと長期化、コスト超過が起きる

アジャイル(Agile)には、素早い、機敏といった意味があり、その名の通り、スピード重視のサービス開発に向いています。市場の動向に合わせて、素早く柔軟に仕様変更ができる一方で、プロジェクトの全体像が把握しにくいデメリットもあります。アジャイル開発は、仕様変更を前提としたWebサービスやアプリ開発などに最適です。

 

3-3.スパイラル開発

スパイラル開発は、システムを機能ごとに細分化して、設計→開発→テストを繰り返し、依頼者のレビューを受けながら開発を進める方法です。アジャイル開発と似ていますが、スパイラル開発は、依頼者側からのフィードバックを前提としている点に違いがあります。また、アジャイル開発では機能単位でリリースされるのに対し、スパイラル開発では、すべての機能が実装されてからリリースされます。

スパイラル開発のメリット・デメリットは以下の通りです。

スパイラル開発の
メリット
  • スケジュール変更に臨機応変に対応できる
  • 依頼者との食い違いが発生しにくい
  • フィードバックが多いため品質を高めやすい
スパイラル開発の
デメリット
  • 全体のスケジュール確認・管理が難しい
  • アジャイル開発に比べリリースに時間がかかる
  • 想定を超える仕様変更があるとコスト超過になる

スパイラル開発は、ウォーターフォール開発とアジャイル開発を掛け合わせたようなモデルです。ウォーターフォール開発は後戻りできませんが、スパイラル開発であれば臨機応変に対応できます。

一方で、スケジュール管理が難しく、コストが超過しやすい点はデメリットです。また、アジャイル開発に比べてサービスリリースに時間がかかるため、スパイラル開発はあまり普及していません。

 

3-4.プロトタイプ開発

プロトタイプ開発とは、開発の途中段階でプロダクトの試作品をつくり、依頼者にフィードバックを貰いながら改善していく方法です。比較的早い段階で試作品をつくることにより、依頼者の完成イメージが沸きやすくなります。

プロトタイプ開発のメリット・デメリットは以下の通りです。

プロトタイプ開発の
メリット
  • 依頼者との食い違いが発生しにくい
  • 要件変更などによる手戻りが発生しにくい
  • フィードバックが多いため品質を高めやすい
プロトタイプ開発の
デメリット
  • プロトタイプ作成にコストがかかる
  • 試作品の作り直しや修正の手間が発生する
  • 大規模なプロジェクトだと工数やコストがかかる

プロトタイプ開発は、ウォーターフォール開発のデメリットを払拭する方法として開発されたと言われています。試作品によってミスや問題点を早期に発見でき、手戻りを軽減できるのがメリットです。

ただし、試作品を触ることで依頼者の要求が増え、開発チームの負担になる可能性も否めません。特に開発規模が大きいプロジェクトの場合はプロトタイプの作成や修正にかかる時間やコストも大きいため、注意が必要です。

プロトタイプ開発は、完成品のイメージが沸きにくい新規事業や、操作性が重要となるプロダクトなどに適しています。

 

まとめ

開発プロセスには代表的なウォーターフォール開発・アジャイル開発の2つ以外にも、スパイラル開発・プロトタイプ開発といったモデルがあります。それぞれの開発プロセスにはメリット・デメリットがあり、向いているプロジェクトも異なります。

開発プロセスの策定はチーム内の認識を合わせて納期遅れを防ぐとともに、過去の知見を蓄積させプロダクトの品質を維持する重要な事項です。開発するサービスやシステムの規模、出戻りの可能性などを考慮して選択しましょう。

監修:六元素情報システム株式会社
監修
六元素情報システム株式会社 ATgoチーム

六元素情報システムは、システム開発現場で培った高い技術力と実務経験を持つ企業です。その知見を活かして開発したテスト自動化ツールATgo(特許6830701号)の提供を通して、日本のシステム開発における生産性向上と品質向上に貢献します。

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