アジャイル開発で活用するスプリントとは?メリットや注意点も解説
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最終更新日:2024年03月27日 / 投稿日:2024年03月26日
スプリントとは、アジャイル開発における開発期間のことを指します。アジャイル開発は仕様変更が予想される場合やスピード感が求められる開発現場で採用されることが多く、生産性の向上や短期間でのリリースを期待できる開発方法です。
当記事では、アジャイル開発でスプリントを設定するメリットと設定の手順について詳しく解説します。現場にアジャイル開発の手法を取り入れようと検討している方は、当記事を参考にスプリントの設定を進めましょう。
1. スプリントとは?
ソフトウェア・システム開発における「スプリント」とは、1週間~1か月単位で区切った開発の期間を指します。スプリントは、主にアジャイル開発で用いられる考え方です。スプリントごとに目標を設定して、設計、開発、テストといった工程を繰り返します。
スプリントを設定したら、その期間中はあらかじめ定めた作業内容に集中します。アジャイル開発は、途中修正や要望の追加に臨機応変に対応できるのが特徴です。スプリントを用いることで、開発作業の生産性向上につながるでしょう。
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1-1. そもそもアジャイル開発とは?
アジャイル開発とは、ソフトウェアやシステムにおける開発手法の1つです。アジャイル開発では、機能単位で「計画」「設計」「開発」「テスト」の流れを繰り返しながら、プロダクト開発を進めます。「素早い」という意味を持つ「アジャイル(agile)」の名の通り、早いスパンでリリースすることが可能です。
従来のシステム開発では、ウォーターフォール開発が主流でした。ウォーターフォール開発は、「要件定義」「設計」「開発」「テスト」の流れを、段階的に行っていく手法です。ウォーターフォール開発では、すべての機能をあらかじめ決めておく必要があり、途中変更は想定していません。また、ウォーターフォール開発はリリースまでに時間がかかるため、スピード感や仕様変更が求められる開発現場では、アジャイル開発が採用されることが一般的です。
アジャイル開発の中にも、方法によってさまざまな種類が存在します。最も有名な「スクラム開発」は、チームで役割を分担し、コミュニケーションを取りながら開発を進めるフレームワークです。
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1-2. イテレーションとの違い
スプリントと似た意味を持つ言葉として「イテレーション」があります。イテレーションは、アジャイル開発における、「設計」「開発」「テスト」「改善」までの1サイクルを表す言葉です。「スプリント(sprint)」は日本語で短距離走、「イテレーション(iteration)」は反復を意味しますが、どちらも開発サイクルを区切った単位として使われます。
スプリントとイテレーションは、開発場面によって使い分けられます。スプリントは主に「スクラム開発」、イテレーションは「XP(エクストリーム・プログラミング)」と呼ばれるフレームワークで使われるのが一般的です。ただし、両者が厳密に使い分けられているわけではなく、スクラム開発にイテレーションが用いられることもあります。
2. スプリントを使うメリット
スプリントは、短期間でのリリースを目的としたアジャイル開発において、基軸となる考え方です。アジャイル開発にスプリントを使うことには、以下のようなメリットがあります。
2-1. 突発的な事態に対応できる
スプリントでは、1サイクルあたりにかかる開発期間は長くても1か月程度です。アジャイル開発では、依頼者の要望が追加されることや、急な仕様変更が起きることがあります。しかし、短期間で工程を区切るアジャイル開発では、次のスプリントで対応が可能です。
一方、ウォーターフォール開発の場合、長期的に開発を進めるため、柔軟に対応するのは困難な傾向にあります。急な仕様変更により、リリースが大幅に遅れることや、多大な追加コストの発生にもつながります。トラブルに関しても、ウォーターフォール開発に比べ、スプリントを使ったアジャイル開発のほうが、より迅速に対応できるでしょう。
2-2. テストがしやすい
スプリントを使った開発では、「計画」「設計」「開発」「テスト」の流れを短期間で繰り返します。機能ごとにテストを行ってフィードバックを得られるため、新規機能を短期間で搭載できるメリットがあります。
特に、ユーザーのニーズが流動的に変化するアプリやソフトウェアの開発では、スプリントによってテストを頻繁に行うのが効果的です。また、スプリントでは工程ごとのスパンも短く、依頼者の要望も素早く反映できます。
2-3. モチベーションを保ちやすい
サービス開発に長期間かかる場合、目標が遠く感じることにより、開発チームのモチベーションが下がってしまうケースは珍しくありません。しかし、スプリントを用いたアジャイル開発では、短期間で開発を進めるため、チームメンバーのモチベーションを保つことにつながります。
スプリントを使うと、チームにとって直近で優先すべきタスクや目標が明確化されます。リリースされてユーザーに届くスパンも短く、開発者にとっての達成感も得やすいでしょう。
3. スプリントを作る手順
スプリントを作成して実行する際は、いくつかの手順に沿って行うことが重要です。ここでは、スクラム開発のフレームワークに則って、スプリントを作る手順とポイントについて解説します。
3-1. スプリントプランニング
スプリントプランニングとは、スクラム開発のチーム全体で、スプリントの作業計画を立てることを指します。システム要件をまとめた計画書「プロダクト・バックログ」をもとに、具体的な工程に落とし込んでいくプロセスです。
スプリントプランニングでは、スプリントに取り組む目的(スプリントゴール)、各スプリントでやること(PBI:プロダクトバックログアイテム)、作業計画(スプリントバックログ)をチームで共有します。また、スクラムチーム内での役割分担も行います。スクラム開発では、プロダクトオーナー、開発チーム、スクラムマスターを配置するのが基本です。
3-2. デイリースクラム
スプリントプランニングが完了したら、実際の開発工程に入ります。スプリント期間中は、デイリースクラムと呼ばれる会議を開催します。デイリースクラムの特徴は、毎日同じ時間に同じ場所で行われることです。また、デイリースクラムの時間枠は15分程度の短時間を厳守します。
デイリースクラムは、開発チームのためのイベントであり、プロダクトオーナー、スクラムマスターの参加は任意です。デイリースクラムでは、昨日行ったこと、今日これから行うこと、仕事を進める上での障害や問題点、の3点を共有します。なお、デイリースクラムは単なる進捗管理ではなく、スプリントゴールの達成を目的とした内容であることが重要です。
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3-3. スプリントレビュー
スプリントレビューとは、スプリントの成果物を依頼者や関係者(ステークホルダー)に発表し、フィードバックを得ることを指します。スプリントレビューでは、プロダクトオーナー、開発チーム、ステークホルダーの参加が必須です。ステークホルダーが参加するため、スケジュール調整や資料作成といった事前準備も必要になります。
スプリントレビューで共有する内容は、スプリントゴール、PBI、進捗状況と今後のリリース予定などです。その後参加者からフィードバックを受け、意見を交換しながら、次の工程の道筋を立てていきます。
4. スプリントを作る際の注意点
スプリントを作る際は、いくつかの点に注意が必要です。まず、スプリントのデメリットとして、プロジェクト管理の手間が増える点が挙げられます。スプリントによって工程を細分化すると、その分管理対象も増加します。管理が煩雑になるのを避けるには、プロダクトオーナーなどの役割分担を明確に定めることが重要です。
また、スプリント計画を実施する際は、チーム内のコミュニケーションが不可欠です。修正や変更が多いアジャイル開発では、スプリント単位で成果を積み上げることが前提となります。チーム内で伝達ミスや認識のズレがあると、プロジェクト全体に影響を及ぼすかもしれません。少数のチームで行うスクラム開発では、メンバー全員に一定以上の開発スキルも求められます。
上記のような注意点があるため、スプリントを効率的に運用できるまでには、時間がかかります。従来のウォーターフォール開発から、スプリントを使ったアジャイル開発に切り替える際は、事前にスクラム研修や練習を行うとよいでしょう。
まとめ
アジャイル開発におけるスプリントとは、1週間~1か月程度の短い期間で区切られた開発期間のことを指します。アジャイル開発では、スプリント内で「計画」「設計」「開発」「テスト」を繰り返し、開発を進めます。
短いスパンを繰り返すことにより、仕様の変更や追加に臨機応変に対応できます。管理の手間や開発時に必要なコミュニケーションの量は増えるものの、テストがしやすく素早い開発を行えるため、スプリントを設定して開発する方法も押さえておきましょう。