IT人材不足の展望について、現役コンサルタントが語る
COLUMN
最終更新日:2026年05月15日

RGS株式会社コンサルタントの君塚です。経産省が2018年に公表した調査書では、2030年に最大79万人のIT人材が不足すると警鐘を鳴らしています。原因として少子高齢化による労働力人口の減少、IT需要の急激な拡大にエンジニア供給が追いつかない、IT技術の進化でIT業界構造が変化しているにもかかわらずエンジニアのスキルが追随できていないなどが言われています。ITの人材不足と対策については様々なところで語られていますが、本稿では、この業界に30年以上いる現役コンサルタントの視点から語ってみたいと思います。
IT業界は昔から人材不足だった
日本におけるITの人材不足は今に始まったことではなく、かつてメインフレームが業界の主役だった80年代から存在しました。当時は大企業、官公庁が業務の効率化を目的として競って大型コンピューターを導入し大量のエンジニアを投入してシステム構築を進めるのが一般的な開発形態でした。しかし、当時のシステム開発は手間がかかり、とても効率的とは言えないものでした。そのため、非効率をカバーすべく大量の人と長時間労働で納期を守るという体制が常態化し、IT業界は人(開発エンジニア)を必要とするにもかかわらず3K(帰れない、厳しい、給料安い)と言われ敬遠される業界でもありました。今振り返るといわゆるブラック企業だったと思うことしきり。
1990年代に入り、時代のニーズに合わせ重厚長大でコストのかかるメインフレームから軽量で小回りが利きコストも抑えられるオープンシステムへとテクノロジーが遷移していくと、それまでの人材の大量投入で開発を進めるという体制から専門技術を持ったエンジニアがリードするという形態に開発体制が変化していきます。しかし開発をリードできるエンジニアは多くなく、引き続きどの現場も人材が不足している状況でした。
供給を上回る需要の高まり
インターネットの普及とともにGAFAMに代表されるIT、ネットビジネスがビジネス界を牽引するようになった2010年代、業界は学生にも意識されるようになり、大学生のなりたい職業の上位にプログラマーが入ってきたのもこの頃です。昨今の働き方改革で、開発の現場も以前の殺伐とした状態から働きやすい環境に変わってきたこと、ゲームでの利用などを通じてコンピューターが誰でも使いこなせる道具になったことなどから業界の敷居が下がった結果、人が集まってくるようになりました。しかし同時にコンピューターの利用範囲は広がり続け、エンジニアの需要が供給以上に増えています。
現在、IT技術は加速度的に進化しており、特に生成AIの誕生でAIエンジニアの育成が喫緊の課題となっています。またユーザーの要求に答えるためにサービスの提供サイクルが短くなっており益々エンジニアの需要がひっ迫する事態となっています。特に最新技術に精通したエンジニアは豊富にいるわけではなく、あちらこちらで引っ張りだこです。また、エンジニアだけではなく、新しいテクノロジーを採用したサービスを企画・提案する能力を持った人材は更に不足しています。今までソリューション提案といわれていたものから、更に踏み込んで新しいテクノロジー、サービスを付加した提案ができる人材が求められています。
これからも伸びるオフショア活用
人口減少が続く以上、国内でエンジニアを短期間で大量に育てていくのは現実的ではありません。開発を海外のエンジニア、特に中国や東南アジアの開発企業に委ねるオフショア開発は様々な現場で実践されてきました。これまで中国が中心でしたがアジアの他の国もオフショア開発に力を入れてきています。コストメリットが小さくなろうとも、人材確保の面から開発拠点としてのアジアはこれからも伸びていくでしょう。また、オフショア開発は当初は品質面で問題を抱えていましたし今でも問題が解消したとはいえませんが、日本での開発、テスト手法を取り入れることで改善してきています。
海外のエンジニアの採用も増えてきており、特にユーザー企業で盛んになってきています。ある企業では開発者との会議は英語としているところもあります。また、楽天グループは積極的にグローバル採用を進めており社内の公用語は英語としています(ただ、楽天グループの場合、グローバルカンパニーへの転身が目的のようなので人手不足からの採用とは若干文脈が異なります)。IT大国として有名なインドのエンジニアや中国のエンジニアの採用はどこでも見られるようになってきました。外国人の日本での就労については様々な障壁がありますが、これからもアジアを中心とした国からITエンジニアとして日本で働く人は増えていくと想像できます。またTCS、Infosys、Wiproなど世界で活躍するインドのIT企業は日本支社を持ちます。このような確かな技術を持った海外のIT企業を利用することも解決策の一つです。
シニアの活用
かつてプログラマー35才限界説という説話がありました。35才を超えるとプログラミングが思うようにできない、つまり頭がついていかない。そろそろプログラムから別の領域、アーキテクト(システム構成を考える人)やシステム設計者、PMに土俵を変えていくべきと言われていました。事実35才を過ぎて別の領域に移ったエンジニアはいます。しかし、立派にプログラマーとして作業を続けている人もいます。例えば、米国では上級プログラマーはハッカーと言って年齢に関係なく大活躍しています(あのコンピューターに悪さをするハッカーではありません)。日本にも、大企業や金融業界で今も現役で稼働しているメインフレームがあります。そこで動作しているプラグラムがCOBOLというメインフレーム特有の言語で書かれており、それをメンテナンスできる人は引退し多くはありません。60才を過ぎたエンジニアがメインフレームの保守をしているのです。そうなんです、メインフレームの現場はシニアが支えているのが現実なのです。
2015年にはITエンジニアに占める50才から64才の割合が17%でしたが2030年には27%になると予測されています。シニアでもエンジニアとして活躍する人が増えるとされています。今人手不足から様々な現場でシニア採用が増えてきており元気なシニアが新しいエリアに挑戦している現場さえあります。ITの世界で新しい分野への挑戦は簡単ではありませんが、プロジェクトを管理する立場にいた人、あるいはかつてその領域で活躍しており多くの知見を蓄えているシニア層はプロジェクト管理の現場でPMとして活躍することもできますでしょうし、PMをサポートする立場で若手PMを多方面から支えることもできます。また先ほどのメインフレームのCOBOLプログラマーは今でも(というか今だからこそ)探しているという話はよく耳にします。
AIの可能性
プログラムも人間が書くよりAIに書かせたほうがすぐれているということもよく聞きます。実際、要件が正しく、網羅的に細部に渡って書かれた要件定義書があればAIがそれを人と比較が無意味になるほどのスピードで正確にコンピューター言語に変換できてしまうのは想像できます。あとはそれをテストして正しく要件通りに動作することを確認するだけなので、作業の生産性は飛躍的に上がるでしょう。ユーザーの要望を実現するためのシステム構成は何が最適なのか、システムを構築するのに何人のエンジニアがどれだけの期間必要なのか、今ある機能に何を追加すればユーザーに喜ばれるかなどなど、多様な要件にもこれからAIが答えてくれることは想像に難くありません。従ってAIが人材不足の一端を補ってくれるでしょうし、分野によってはAIとコラボレーションすることが普通の作業プロセスになる、今すでにそうなっている分野もあるでしょう。AIが担うところはAIに任せる、となると今の仕事をAIに奪われると危惧する人もいるかと思いますが、AIで人手が充足する分野はAIに任せ、そうならない分野に人手の作業をシフトしていくことも必要でしょう。今までも新しい技術が人に置き換わり、人が担う新しい仕事が誕生してきました。楽観的な見方でしょうか。経産省は、2040年就業者数は今より400万人減るもののAIやロボットなどで不足は発生しないという予測を立てています。更に理系人材は120万人不足するが文系人材は440万人余剰が出るといいます。
人手不足に関して実際に起きていることを中心に思いつくままいくつか述べてきましたが、これ以外にも多くの対策があるでしょう。先述したようにITの人手不足は何年も前から訴えられてきおりそれでも今まで乗り切ってきました。長時間労働で乗り切った、一部のエキスパートエンジニアが対処してきたなど対策したというよりやむなく現状のまま進んできました。働き方改革が謳われそれまでのような無茶な仕事は慎むのが当たり前になり、AIというツールが登場して今までと違う仕事の仕方をするようになればそれがまた人手不足を乗り切る礎になるでしょう。
さいごに、もうひとつの有効な解決策
最後に、ITエンジニアの人手不足解消の有効な手段を一つ。
システム開発の最終工程はテストです。テストの効率を如何に上げるかは開発工程の命題でした。テストの自動化は今開発現場では当たり前の技術になりつつあります。この分野もAIが導入され、いかに容易に自動化が実現できるかを競っています。しかし、技術の確立された分野ではないため、いかにサポートが充実しているかが導入の鍵でもあります。ATgoは日本で開発され日本で充実したサポートを提供しています。ぜひ一度トライしてみてください。
SI企業にて業務系システムの構築に従事した後、ITコンサルティング会社でコンサルタントとして活躍。ミッションクリティカル領域のプロダクトを担う企業の技術系責任者を経て、2023年から合同会社ステップ&ストップ代表。RGS株式会社ではコンサルタントとして活動している。
編集:RGS マーケティング











