システム障害報告書とは?記載すべき項目と書き方・ポイントも
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最終更新日:2025年12月23日 / 投稿日:2025年12月23日

企業活動においてシステムは業務の根幹を支える存在であり、安定した稼働が強く求められています。しかし、どれほど入念に設計・運用していても、予期せぬトラブルや不具合を完全に防ぐことはできません。万が一障害が発生した場合には、迅速かつ適切な対応が不可欠です。
そして、障害発生時に重要となるのが「システム障害報告書」です。システム障害報告書は、障害の内容や原因、対応状況を関係者に正確に共有するための資料であり、単なる経過報告にとどまらず、再発防止や業務改善にも大きく関わる重要な文書と言えます。
そこで今回は、システム障害報告書の概要や作成目的を整理したうえで、記載すべき項目や具体的な書き方、作成時に押さえておきたいポイントについて分かりやすく解説します。
1. システム障害報告書とは?

システム障害報告書とは、システムに不具合や停止などの障害が発生した際に、その内容や原因、対応状況などを整理して関係者へ共有するための文書 です。
障害の事実を記録するだけでなく、業務への影響や復旧までの経緯、今後の対策までをまとめることで、組織全体の理解と対応力向上につなげる役割を担います。
特に、社内外の関係者が多いシステム障害では情報が錯綜しやすく、対応の遅れや認識のズレが生じやすくなります。そのため、誰が読んでも状況を正しく把握できる形でまとめられたシステム障害報告書が重要です。
1-1. システム障害報告書の作成目的
システム障害報告書を作成する主な目的は、下記の通りです。
●発生した障害内容の報告
システム障害報告書を作成する第一の目的は、発生した障害の内容を正確に伝えることです。いつ・どこで・どのような障害が起き、業務や利用者にどのような影響があったのかを明確にすることで、関係者間で共通認識を持つことができます。
●発生した障害の原因特定
障害の原因を整理・特定することも重要な目的の1つです。ログや作業履歴を基に原因を明らかにすることで、場当たり的な対応を防ぎ、同様のトラブルへの適切な判断材料となります。
●再発防止への貢献
報告書に原因と対策を残すことで、将来的な再発防止に役立てることができます。過去の障害事例を蓄積することで、組織全体のリスク管理やシステム品質の向上にもつながります。
1-2. システム障害報告書の作成タイミング
システム障害報告書は、基本的に障害が発生し、状況が一定程度把握できた段階で作成するのが一般的 です。特に業務や顧客に影響が出た場合は、復旧後できるだけ早く作成し、事実関係が曖昧になる前にまとめることが重要です。
しかし、システムの運用と障害発生時の対応をすべて1人の担当者が担っている場合、まずは障害からの復旧が最優先となるため、システム障害報告書の作成は事後対応になりやすい傾向があります。
なお、重大な障害については暫定報告と最終報告に分けて提出するケースも見られます。
2. システム障害報告書に記載すべき項目と書き方

システム障害報告書に記載する項目は、企業やチームのルールによって細かく異なります。
ここでは、一般的によく用いられる項目を中心に、システム障害報告書に記載すべき基本項目とそれぞれの書き方を紹介します。
2-1. 障害内容
障害内容とは、発生したシステム障害の概要を正確に説明する項目 です。どのシステムにおいてどのような不具合が起きたのかを、簡潔かつ具体的に記載します。
専門的な表現に偏りすぎず、非エンジニアの関係者でも理解できる表現を意識することが重要です。画面エラーや機能停止など、利用者から見た症状を中心にまとめると伝わりやすくなります。
なお、「発生していた可能性はあるものの、事実確認が取れていない」という障害内容・事象に関しては、基本的に記載する必要はありません。
2-2. 発生・復旧日時
発生・復旧日時とは、障害が発生した時刻と復旧が完了した時刻を明確にする項目 です。
システム障害の発生から復旧完了までの日時を「〇〇年〇〇月〇〇日〇〇時〇〇分(発生日時)~〇〇年〇〇月〇〇日〇〇時〇〇分(復旧日時)」と正確に記載することで、障害の継続時間や業務への影響度を客観的に把握できます。
発生時刻が不明確な場合は、障害を検知した時刻や最初に確認された時刻を記載し、その旨を補足すると良いでしょう。
なお、サービス提供者と利用者の間で結ばれる「SLA(Service Level Agreement)」によっては、システム障害が継続した時間によって賠償問題に発展するおそれもあるため、正確さが非常に重要となることも覚えておきましょう。
2-3. 影響範囲
影響範囲とは、障害によって影響を受けた業務や利用者、システムの範囲を示す項目 です。システムが通常利用できなかったことで滞った社内業務だけでなく、顧客や取引先などのシステム利用者に対してどのような影響を及ぼしたのかも明確にします。
影響範囲を記載する際は、「システム障害が発生していた時間帯の影響」と「システム障害の収束後も継続して発生している影響」の2つに分けて記載すると分かりやすいでしょう。
なお、システム障害による影響が限定的だった場合でも「影響なし」とせず、どの範囲まで確認したのかを具体的に記載することが重要です。
2-4. 原因
原因とは、システム障害が発生した要因を整理する項目 です。設定ミスやプログラム不具合、外部要因など、事実に基づいて「直接的な原因」と「根本的な原因」の双方を記載します。
推測や憶測で断定せず、調査の結果判明している内容と、現時点では未確定な点を分けて書くことで、報告書としての信頼性が高まります。
2-5. 経緯
経緯とは、障害発生から復旧までの流れを時系列でまとめる項目 です。どの時点で異常を検知し、どのような対応を行ったのかを整理して記載します。
時刻や担当者、実施した作業内容を簡潔に書くことで、後から振り返った際にも状況を把握しやすくなります。
2-6. 暫定対応
暫定対応とは、障害発生直後に実施した応急的な対応内容を記載する項目 です。
サービス停止や設定変更、手動対応など、発生したシステム障害の収束や障害による影響範囲の最小限化を優先するために、すぐに実施した対応を記載します。
恒久的な解決策ではないことを前提に、「なぜその対応を行ったのか」という判断理由を補足すると、読み手が理解しやすくなります。
2-7. 恒久対応
恒久対応とは、障害の根本原因を解消するために実施、または実施予定の対応を示す項目 です。プログラム修正や設計変更、運用ルールの見直しなどが該当します。
暫定対応との違いを明確にし、対応完了の目安や今後の対応計画をあわせて記載することが重要です。根本解決に向けて複数のタスクがあり、他部署との調整やスケジュールの検討が必要な場合も、その旨をしっかりと記載しておきましょう。
2-8. 再発防止策
再発防止策とは、同様の障害を繰り返さないための具体的な対策を示す項目 です。チェック体制の強化や監視の見直し、手順書の整備などが挙げられます。
単なる理想論にとどめず実行可能な対策として落とし込むことで、システム運用全体の品質向上につながります。
なお、実施することで再発の可能性が限りなく低くなると予測できる場合であっても、断定表現はなるべく避けましょう。あくまでリスク低減を目的とした再発防止策であることが分かる書き方を心がけることが大切です。
3. システム障害報告書を作成する際のポイント

システム障害報告書は、一般のシステム利用者などの専門知識をもたない関係者が読むケースも多いです。そのため、抽象的な表現は避け、できる限り具体的かつ分かりやすい表現を心がけることが重要となります。
また、記載漏れや内容のばらつきを防ぎ、効率的かつ安定した品質で作成するためにも、テンプレートを活用すると良いでしょう。
システム障害報告書のテンプレートはさまざまなサイトからダウンロードできるほか、ExcelやWord形式で提供されているものが多く、項目を自由に調整できる点も特徴です。テンプレートをそのまま使うのではなく、自社の運用や体制に合わせてカスタマイズして活用すると良いでしょう。
まとめ
システム障害報告書は、障害発生時の状況や原因、対応内容を整理し、関係者間で正確に共有するための重要な文書です。記載項目を押さえ、具体的かつ分かりやすくまとめることで、再発防止や運用改善にもつながります。
しかし、最も重要なのはシステム障害を「そもそも起こさない」ため、そして「早期に検知する」ための仕組みづくりです。
テスト自動化を導入すれば、人的ミスの削減やバグの早期発見が可能となり、結果としてシステム障害の発生率そのものを下げることが期待できます。システム品質の向上やテスト体制の見直しを検討している場合は、ぜひテスト自動化ツールの「ATgo」にお問い合わせください。













