QAとは?システム開発での品質保証の必要性とQAの役割について解説
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最終更新日:2023年06月12日 / 投稿日:2023年01月06日
モノづくりを行う業界・現場においては、開発するサービスや製品が問題なく機能するかどうか・ユーザーが求めている品質となっているかどうかを保証しなければなりません。品質を評価し、かつ品質向上に向けた活動は一般的に「QA(品質保証)」とされています。
しかし、システム開発の現場においてQAとは、活動そのものではなく品質保証を務めるポジションを指します。一般業界で用いられるQAとやや意味が異なることを覚えておきましょう。
そこで今回は、IT業界におけるQAの概要から、重要性と役割まで徹底的に解説します。QAというポジションがどのような役割を果たすのか、どのような仕事内容なのか気になる方は、ぜひご覧ください。
1. QAとは?
QAとは、「品質保証」という意味を指す「Quality Assurance」の頭文字を略称した言葉です。一般的なモノづくりの現場においては、サービスや製品の品質管理から品質保証、さらに品質向上までの一連の“活動”を指します。しかし、ITシステムなどの開発を行う業界においては、やや意味が異なります。
IT業界におけるQAとは、開発中のシステムやソフトウェアの品質管理業務全般を行う“立場”のことです。したがって、IT業界には「QAエンジニア」と呼ばれる人材(職種)が多くいます。
なお、当記事ではIT業界におけるQAに焦点を当てて、より詳しく説明していきます。
1-1. QAエンジニアとテスター・デバッガ―との違い
IT業界におけるQAとよく似た言葉として、「テスト」「デバッグ」があります。QAを行うエンジニアがQAエンジニアと呼ばれるように、デバッグを行うエンジニアはデバッガー、テストを行うエンジニアはテスターまたはテストエンジニアと呼称されることが特徴です。
QAエンジニア・テスター・デバッガーは、いずれも似たような意味をもっているものの、厳密にはそれぞれ異なる役割を果たします。
なお、テスターがシステムテスト中にバグを発見した場合は、デバッガーに報告します。デバッガーによってバグの解析や修正が行われたら、テスターは再度チェックを行うという流れが基本です。
2. QAはなぜ必要?
QAの主な役割やテスター・デバッガーとの違いについては理解できたものの、なぜテスター・デバッガーがいるうえでQAエンジニアの存在が必要となるのか分からない方も多いでしょう。
QAエンジニアも、システム開発・ソフトウェア開発においてあらゆるテストを実施します。しかし、QAエンジニアが行う品質テストは開発者が行うような「仕様書に沿った動作テスト」ではありません。
QAエンジニアが行うテストは、ユーザーが使いやすいかどうか、品質として条件を満たしたものになっているかに着目したテストです。ユーザーの実際の利用環境に基づき、想定されたシナリオでシミュレートを行いながら使い勝手を確認するなど、より客観的なテストを行うことが特徴と言えるでしょう。
開発中のシステムやソフトウェアが仕様通りに動作するかどうか、といった点は当然重要です。しかし、実際に製品をリリースしたのち、ユーザーが問題なく使えるか・使いやすさを感じられるかといった点も同様に重要なポイントとなります。このような観点に重きを置いてあらゆるテストを実施するQAエンジニアは、システム開発・ソフトウェア開発において重要性の高いポジションと言っても過言ではありません。したがって、エンジニア転職・エンジニア派遣では、QAエンジニアの平均給与や単価が高く設定される傾向にあります。
3. QAの役割
QAエンジニアは、開発中システムの品質を向上させるために、さまざまな業務を担当します。しかし、具体的にどのような役割をもってどのような仕事をこなすか分からないという方も多いでしょう。
QAエンジニアの主な役割・業務内容は、下記の通りです。
- 設計段階での仕様確認
- テストの設計
- テストの実行と分析
- テスト自動化
- 開発プロセスの改善
- 顧客対応
ここからは、それぞれの役割・業務について詳しく説明します。
3-1. 設計段階での仕様確認
システム開発・ソフトウェア開発においては、必ず初めに「どのようなシステムや機能が必要なのか」といった点を開発者側・発注側ですり合わせてから、ニーズを満たす仕様を詳細に決定します。この設計段階を、「システム設計」と言います。
QAエンジニアは、システム設計において機能仕様や設計内容の確認・評価を行います。具体的には、仕様に曖昧な点や抜け漏れがないか、仕様変更による問題の発生がないかなどをチェックし、不具合が発生するリスクを可能な限り回避します。また、必要に応じて開発者に対し仕様変更の提案を行うことも重要な役割です。
3-2. テストの設計
システム設計における仕様確認が完了した後は、テストの設計に入ります。テスト設計の最終成果物は「テストケース」であり、QAエンジニアはこのテストケースの設計を行う必要があります。
テストケースとは、テスト実施時に用いる仕様書・手順書のことであり、テスト対象を「どのような状態にし、どのような操作をして、どのような結果が出るとOK/NGと判定するか」といった内容を記載します。
品質保証テストの設計において、QAエンジニアはまず、実際の利用環境に基づいてユーザーケースやシナリオを想定します。テストケースは、想定したユーザーケースやシナリオをもとに設計することが基本です。
3-3. 課題を洗い出す
テスト設計が完了した後は、設計したテストケースに基づいて適切なフローを実施し、システム動作を正確に確認・評価します。また、テスト結果に応じた不具合の分析も、QAエンジニアの役割です。
不具合を発見した際は、これまで発見した不具合の傾向を分析したのち、不具合の再現手順や内容をまとめたエビデンスとともに、開発者やテスター・デバッガーなどへ報告します。加えて、不具合だけでなく各開発工程・テスト工程を分析し、開発者に対してフィードバックを実施するケースもあります。
このようなテストの設計・実行・分析は、QAエンジニアならではの役割であり、中心業務でもあると言えるでしょう。
3-4. テスト自動化
必要に応じてテストの自動化を行うことも、QAエンジニアの重要な役割です。「テスト自動化」とは、その名の通りシステムテストにまつわる作業の全体または一部を自動化することを指します。
多くのデータを用いるテストを人の手で行うとなれば、膨大な手間と時間がかかります。抜け漏れといったミスも生じやすく、人的コストの増大化にもつながるでしょう。そのため、QAエンジニアは適切なテスト自動化ツールを用いた効率的なテスト計画の検討も行う必要があります。
品質テスト自動化は、QAエンジニアの業務効率化に大きく貢献するものですが、テスト自動化環境を構築するためには少なからず開発作業・運用作業が必要です。自動化ツールを用いた検証を行う場合でも、品質保証に着目したテスト設計がベースとして必要となることを覚えておきましょう。
3-5. 開発プロセスの改善
開発プロセスの見直しや改善も、QAエンジニアの役割です。
テストプロセスを含む開発プロセスにおいては、たとえ優秀なプログラマー・エンジニアが携わっていたとしても、ミスを完璧になくすことはできません。知らず知らずのうちに混入させたバグをしっかり検出するためには、仕様通りの動作ができているかという確認だけでなく、実際の利用環境に基づいたテストの実装も必須です。
QAエンジニアは、品質保証を担うエンジニアとして開発中システムの分析やレビューを行い、不具合が発生する原因となる「開発プロセス自体の問題点」を洗い出す必要があります。加えて、不具合を混入させないためにはどのようなプロセスで開発すればよいのか、不具合をいち早く発見するためにはどのようなテストが有効なのかを明確にし、製品の品質向上に努めることも大切です。
3-6. 顧客対応
QAエンジニアやデバッガー・テスターは、開発者よりも製品の仕様について詳しく理解している傾向です。そのため、専用の問い合わせ窓口がない場合、顧客対応はQAエンジニアが行うというケースも少なくありません。特に、不具合対応の窓口として対応するケースは多々あります。
企業によっては、QA部門を設置し、開発した製品の品質管理について一任するところもあります。この場合、不具合に関する責任もQA部門が負うケースも多いため、優秀なQAエンジニアはより重宝されると言えるでしょう。
まとめ
QAとは、「Quality Assurance:品質保証」の頭文字を略称した言葉であり、ソフトウェア開発を行うIT業界においては「開発中のシステムやソフトウェアの品質管理業務全般を行う立場」を指します。したがって、品質保証に関する業務を行うエンジニアは「QAエンジニア」と呼ばれています。
システム開発・リリースにおいて、実際に使用するユーザーの使いやすさや満足度は非常に重要です。客観的なテストの設計・実施から開発プロセスの改善、顧客対応まで行えるQAエンジニアは、非常に重要性の高いポジションと言えます。その分、より専門的な知識やスキルが必要となることも覚えておきましょう。