現新比較テストとは?現新比較の課題と実施のタイミングを解説
COLUMN
最終更新日:2023年06月29日 / 投稿日:2023年05月18日
システムや機能を提供する際、品質の確認やバグの最終チェックのために行われるのが受入テストです。現新比較テストは受入テストの一種ですが、特にシステムの改修やアップデートを行った際に実施されます。
当記事では現新比較テストについて、どのようなテストか必要な場面を解説するとともに、実施方法や課題も合わせて説明します。開発しているシステム・機能の品質を担保したいときは、効率的に現新比較テストを行うとよいでしょう。
1. 現新比較テストとは?
現新比較テストとは、システムを改修する前の出力と改修した後の出力を比べ、データのやり取りや連携の実施に不具合がないかどうかを検証する手法です。
現新比較テストでは、現行システムと新システムを同時に稼働させることにより細かく比較検証します。
現新比較テストは受入テストの一種で、新旧比較テストともいいます。現新比較テストを問題なく通過させることは、改修後のシステムや機能の品質の裏づけにつながるため、受入テストの中でも非常に重要な作業です。
1-1. 受入テストとは?
受入テストとはシステムやソフトウェアを検証する方法の1つで、システムやソフトウェアの開発プロセスを外注した場合に、発注元が実施する最終的な確認です。
発注元は受入テストにおいて、実際に運用する環境もしくは実際の運用環境に近い環境で、使用するプロセスに沿いながらシステムやソフトウェアをユーザー目線で操作します。
受入テストの種類には、最も重要な現新比較テストのほか以下のテストがあります。
- 運用受入テスト
- マニュアルテスト
- 機能確認テスト
- システム間連携テスト
- シナリオテスト
発注元は受入テストの結果を受け、システムやソフトウェアの仕様が要件を満たしているかという点や、リリース後に運用できる状態にあるかという点などを検証します。
受入テスト実施時に重要な点は、単なる不具合の検出だけでなく、ユーザーが業務を遂行できるかという観点で慎重に検証を行うことです。
受入テストによって品質を承認した後、システムやソフトウェアの開発工程は完了となり、ユーザーに製品やサービスが提供されます。
2. 現新比較テストが必要な場面は?
現新比較テストは、主にシステムのアップデートやマイグレーションの際に行うとよいでしょう。ここでは、システムアップデートとマイグレーションのそれぞれのケースについて詳しく解説します。
2-1. システムアップデート
アップデートとは「更新」を意味する言葉で、コンピューターやスマートフォン、アプリなどを最新の状態にすることです。主に機器の不具合の改善やセキュリティの強化を目的として、ソフトウェアの追加や修正を行います。
アップデートはファームウェア・アップデートとソフトウェア・アップデートの2種類に分けられます。
本体の仕様変更やOSのバージョンアップの実施はファームウェア・アップデート、インストールされているソフトウェア・アプリの更新はソフトウェア・アップデートです。OSとはオペレーティングシステムの略で、コンピューター全体を制御してユーザーが使いやすくするための基盤となるシステムを指します。
アップデートの中でもよく知られているものの1つのは、Windowsを最新状態に保つ「Windows Update(ウィンドウズアップデート)」です。
システムアップデートでは、さまざまなトラブルが生じる可能性もあります。アップデート後にエラーの発生はないか、アップデート前と同じ結果を出力するかといった点を、現新比較テストによって検証することが大切です。
2-2. マイグレーション
マイグレーションとは、既存のコンピュータシステムを構成する機器やOS、アプリケーションソフトなどを、新たに準備した別の製品に入れ替えることです。
マイグレーションではシステムを全面刷新して新しい環境に置き換えるため、ソフトウェアの部分修正や装置の一部を交換するといった、部分的な入れ替えではありません。「機種もしくはOSについては同じ」「既存のソースコードを用いる」など、既存のシステム環境のどの部分を残すかによって、多様な手法が使われます。
マイグレーションを行うと、ハードウェアのスペックが高まりデータの高速処理やシステムの負荷軽減が可能となり、業務環境の快適性アップが期待できます。
マイグレーション開発では、ある程度のプログラムやイベントがまとまった機能単位での動作保証が大切です。機能単位の動作を検証するため、「画面への出力」や「データベースの更新」といったすべてのイベントを網羅するように、現新比較テストを行います。
現行システムと新システムで同じ操作を行い、現・新のシステムで一致するかどうかを確認すれば、機能として成立していることを保証できます。
3. 現新比較テストの課題
現新比較テストは新システムの機能・品質保証に重要であるものの、テストの実施にはさまざまな課題があります。ここでは、現新比較テストの3つの課題について説明します。
3-1. 労力がかかる
現新比較テストでは現行システム・新システム両方のデータをそろえ、一つひとつの画面や帳票ごとにトラブルがないか検証を繰り返します。現行システムと新システムの実行結果がすべて同じになるまで検証するため、テストデータを1度用意すれば済むというわけにはいきません。
大規模なシステム検証を行う場合は特に、目視による確認やエビデンス取得作業に大きな労力がかかります。
テストデータ準備に労力がかかりほかの業務に手が回らなくなったり、比較テスト作業に待ち時間が生じることで効率よくテストを行えなかったりするといった課題があります。
3-2. コストが増加する
現新比較テストのテスト工程では非常に多くのデータを要します。テストデータの多くはバックアップ・リカバリで準備できますが、現行システムのテストデータについては準備できません。
現行システムのデータは刻一刻と変化していくため、テスト準備ですべてのデータを保存するには膨大なストレージの用意が必要です。ストレージの用意にはコストがかかるので、プロジェクトの必要経費は増加する可能性が高いでしょう。
3-3. 高いスキルが求められる
システムの改修や移行による不具合には、以下のようなものがあります。
- 文字崩れ
- 表示崩れ
- リンク切れ
上記のようなシステムトラブルを見逃すことなく、必要データを運用テスト環境に再現するには、高いエンジニアスキルが必要です。また、該当システムがほかの周辺システムと連携している場合は、影響する範囲をしぼり込むスキルも要します。
そのため、現新比較テストに対応できる人が限定されるとともに、テスト担当者の負担が大きくなるリスクもあります。
4. 現新比較テストを正しく行うには?
現新比較テストを正しく行うポイントは、以下の2つです。
- 最終テスト以前から徹底してテストを行う
- 現新比較のためのツールを利用する
現新比較テストでは、検証した結果が一致せずに再検証を要する部分が発生します。
再検証が必要な原因が、1画面や1ジョブに限られるケースであれば問題ありません。しかし、広範囲での再検証が必要となるケースが多い傾向があります。
効率的なテスト実施には、再検証の発生の防止が大切です。
再検証をできるだけ少なくするために、システム改修の最終段階以前の開発プロセスで、徹底的にテストを行います。徹底したテスト作業の実施によって、問題点を最小化することが可能です。
また、現新比較テストに強みを持った支援ツールを利用することもポイントです。
ツールを活用すると、過去データを簡単に再現したり、データ準備を短時間で済ませたりといった効率化が図れます。
まとめ
現新比較テストとは、システムを改修・更新する前と後を比較し、改修後に何か不具合が発生しないかどうかを確認するテストのことです。現新比較テストの実施により改修したシステムの質を担保できる一方、実施にかかる労力やコスト、人員に必要なスキルレベルの高さが課題として挙げられます。
効率がよいテストの実施は、システム開発の現場に必要不可欠です。スムーズなテストを行うためには、ぜひ現新比較テストに特化したATgoの導入をご検討ください。