マルチプラットフォーム開発とは?方法とメリットも詳しく解説
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最終更新日:2023年06月20日 / 投稿日:2023年06月20日
マルチプラットフォームとは、クロスプラットフォームとも呼ばれ、異なる機種やOSでもソフトウェアが動作するようにプログラムを設計することです。さまざまな環境に対応できるように設計することで開発工数を抑えられるため、マルチプラットフォームについてこれから勉強していきたいと思っている方も多いでしょう。
当記事では、マルチプラットフォームの概要から、マルチプラットフォームの仕組みやメリット・注意事項まで、詳しく解説しています。エンジニアの方やマルチプラットフォームについての理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。
1.マルチプラットフォームとは?
「マルチプラットフォーム(別名:クロスプラットフォーム)」とは、特定のソフトウェアが複数の異なるOS(オペレーティングシステム)やハードウェアプラットフォーム上で動作することを指します。たとえば、あるソフトウェアがWindowsだけでなく、macOS、Linuxなどでも問題なく動作する場合、そのプログラムはマルチプラットフォーム対応と言えます。
また、ゲーム業界にも「マルチプラットフォーム」という言葉があります。これは同じタイトルのゲームを複数のゲームハードウェア(例:Nintendo Switch、PlayStationなどのゲーム機)でプレイできる状態のことです。
マルチプラットフォームの手法としては、主に以下の2つが挙げられます。
・ソースコードを同じにする
1つのソースコードを書き、それを複数のプラットフォームに対してコンパイル(他の言語に変換すること)する方法です。WindowsとmacOS、iOSとAndroidなど、各プラットフォームに対応したソフトウェアやアプリケーション(アプリ)を開発する際に、よく使用されます。
・仮想マシンを利用する
各プラットフォーム上に実装された仮想マシン(VM:Virtual Machine)やランタイム環境上でソフトウェアを実行する方法です。仮想マシンを分かりやすく説明すると、Windowsが搭載されたパソコン上で、macOSを起動させるようなイメージです。
仮想マシンを利用する代表的なものが、Java言語やスクリプト言語による開発です。たとえば、Javaアプリは、Java Virtual Machine(JVM)上で実行され、JVMが各プラットフォームに対して提供されています。これにより、同じJavaコードがWindows、macOS、Linuxなどの異なるプラットフォーム上で動作します。
2.マルチプラットフォームの仕組み
マルチプラットフォームを実現する方法として、「ネイティブ型」「独自レンダラ型」「ハイブリッド型」の3つの仕組みがあります。各手法にはそれぞれ特徴があるので、以下で紹介する内容を確認してみましょう。
2-1.ネイティブ型
ネイティブ型は、各プラットフォームにあるレンダリングエンジン(描画エンジン)を使用する仕組みです。ネイティブのAPI(Application Programming Interface)を直接呼び出すため、ネイティブアプリと同等のパフォーマンスとUI/UXを提供できます。
ネイティブ型は、オフライン環境でも使えるゲームアプリや健康管理アプリなどに向いている形式です。ネイティブ型の代表的なサービスとしては、MicrosoftのXamarinや、Meta(旧Facebook)のReact Nativeなどが挙げられます。
2-2.独自レンダラ型
独自レンダラ型は、UIをレンダリングするために、フレームワーク独自のレンダリングエンジンを使用します。OSに依存しないでマルチプラットフォームを実現する仕組みです。
GoogleのFlutter、Unity TechnologiesのUnityなどが代表的なサービスです。主にゲーム開発で使用される形式となります。
2-3.ハイブリッド型
ハイブリッド型は、主にWeb技術(HTML、CSS、JavaScript)を使用してアプリを開発し、WebViewコンポーネントを通じてWebページを表示する仕組みです。WebViewコンポーネントは、WebページをChromeやSafariなどのWebブラウザと同じように表示する機能を持ちます。
代表的なサービスとしては、Apache Cordova、Ionic、Electronなどが挙げられます。機能の一部をWebに頼っているため、ネイティブ型と比較すると高度な機能の実現が難しい一方で、容易に開発できる点がメリットです。
3.マルチプラットフォームでの開発は行うべき?
マルチプラットフォームでの開発にはメリットもありますが、同時に気をつけなくてはならない点もいくつかあります。以下では、マルチプラットフォームのメリットと注意点を詳しく解説します。
3-1.マルチプラットフォームのメリット
マルチプラットフォームのメリットとして、まずは下記の2点をチェックしておきましょう。
・コスト削減ができる
マルチプラットフォームのツールやフレームワークを使用することで、1つのコードベースを複数のプラットフォーム(例:WindowsとMacOS)で再利用できます。各プラットフォームで異なるアプリケーションを開発する必要がなくなるため、開発時間とコストを大幅に削減することが可能です。
また、バグの修正や機能の追加、仕様変更も1つのソースコードを改修するだけでいいので、メンテナンスにかかる時間も少なくなります。
・人員を確保しやすい
マルチプラットフォームの開発ツールは、多くの場合、JavaScript、Python、C#などのプログラミング言語を使用します。これらの言語は広く使われているため、該当スキルを持つエンジニアを見つけやすく、結果的に人材コストも抑えやすくなります。
たとえば、JavaScriptを使ったReact NativeやHTML・CSS・JavaScriptを使用したCordovaなどのフレームワークは、既にWeb開発の経験があるエンジニアにとっては、習得が比較的容易でしょう。
3-2.マルチプラットフォーム開発の注意点
マルチプラットフォームを開発する際の注意点として、以下の2点が挙げられます。
・日本での開発事例は少ない
日本では、マルチプラットフォームの開発事例や実装ノウハウがまだ十分に蓄積されていません。日本語でのドキュメントもまだまだ少ないので、開発者の学習コストもかかりやすく、結果的にまだあまり浸透していない状態です。
・OSごとの対応が大変
OSごとに不具合が発生した際は、各OSに対応した開発言語でコーディングし直す必要があります。
OSのアップデートが新しくリリースされたときには、その新機能に対応させる必要があるでしょう。しかしマルチプラットフォームの場合は、マルチプラットフォームが最新のOSに対応するのを待たなくてはなりません。最新の機能を実装しにくいという点が、マルチプラットフォームのデメリットの1つです。
まとめ
マルチプラットフォームは異なるプラットフォーム上で同じアプリケーションを動かせるようにするプログラムのことで、主にネイティブ型・独自レンダラ型・ハイブリッド型の3種類があります。
日本ではマルチプラットフォームがまだまだ浸透していないものの、大手企業がマルチプラットフォームを導入して開発を進めている事例も少しずつ出てきています。海外では開発事例も多いので、マルチプラットフォームの重要性は今後より高まっていくと考えられるでしょう。