E2Eテストとは?メリット・デメリットと実施方法を解説
COLUMN
最終更新日:2023年06月05日 / 投稿日:2023年01月05日
システム開発の際は、不具合やバグを防止し、納品・リリース後も問題なく動作するかどうかを確認するために、あらゆるテストを実施する必要があります。システムテストの手法にはさまざまありますが、なかでも「エンドユーザーの視点に立ったワークフローの検証」において特に重要となるテストがE2Eテストです。
当記事では、E2Eテストの概要からメリット・デメリット、さらに実施の流れやポイントまでを詳しく解説します。不具合のないシステムを開発するためにE2Eテスト実行を検討しているという方は、ぜひ参考にしてください。
1. E2Eテストとは?
E2Eテスト(エンドツーエンドテスト)とは、ユーザーの実際の利用環境に基づき、システムが正しく動作するか・データフローが適切に機能するかどうかを、システム全体を通して検証するテストです。総合テストフェーズで実施されるもので、UIテストと呼ばれることもあります。
システムやソフトウェアで利用するコンポーネントやレイヤーをすべて結合した状態で、ユーザーエクスペリエンスを最初から最後まで徹底的にテストすることから「End to Endテスト」と呼ばれ、現在ではE2Eテストという名称が浸透しました。
E2Eテストはユーザーの実際の利用環境において、想定されたすべてのシナリオに基づいてシミュレーションすることが特徴です。あらゆるシミュレーションを行うことで、リリース・導入後も期待通り機能するかを検証できます。
テスト仕様書に基づき手動で行うケースが多く、業務負担がかかることからほかのテスト手法と比べて実装されにくい点も特徴です。なお、E2Eテストは開発チーム・テストチーム全体で実行することもあれば、QAエンジニアが請け負うこともあります。
テスト自動化ツールならATgo
1か月トライアル無料:詳細はこちら
2. E2Eテストのメリットとデメリット
E2Eテストの実施によってさまざまなことを実現できる一方で、導入には手間やコストがかかります。そのため、システム開発においてE2Eテストを実施しないというケースも珍しくありません。
E2Eテストを実施するかどうかは、「E2Eテストの実施によって何が実現できるのか・何が課題となるのか」を理解したうえで決めるとよいでしょう。
ここからは、E2Eテストのメリット・デメリットをそれぞれ詳しく紹介します。
2-1. ソフトウェアとハードウェアの違い
E2Eテストの主なメリットは、「ユーザー視点でのテストができる」「環境固有の問題を発見できる」の2点が挙げられます。それぞれの詳細は、次の通りです。
● ユーザー視点でのテストができる
E2Eテストでは、システム全体を通してユーザーエクスペリエンスを徹底的に検証します。ユーザー視点でのテストは、本来実現したい機能が実現できているかどうかに加えて、使い勝手のよさなども把握でき、よりユーザビリティの高いシステム開発につながるでしょう。
● 環境固有の問題を発見できる
テスト環境と本番環境においては、どうしても差異が生じてしまう傾向にあることから、システムテストは可能な限り本番環境に近い環境で実装することが推奨されています。E2Eテストは使用ユーザーの視点に立ち、想定されるシナリオに基づいて実装するテストとなっているため、本番環境特有の問題を発見しやすい点がメリットと言えるでしょう。
2-2. E2Eテストのデメリット
E2Eテストは、メリットだけでなく当然デメリットも存在します。主なデメリットは、「テストに時間がかかる」「テスト設計が難しい」の2点です。
● テストに時間がかかる
E2Eテストでは、適切なデバイスを用いて実際にサーバーやブラウザ・サイトを使用することから、時間がかかりやすい点が特徴です。想定されるテストシナリオが多ければ多いほど、工程・工数も増えるでしょう。大きな問題を発見した場合は、大幅なメンテナンスが必要となる可能性があることにも注意が必要です。
● テスト設計が難しい
E2Eテストは、想定したシナリオに基づいて徹底的に検証するものであることから、テスト要件が膨大になりやすい点も特徴です。テストに時間がかかるだけでなく、設計の難易度も高まるでしょう。可能な限り短期間でテスト実装を終えるためには、ユーザーの目的をきちんと理解したうえでテスト設計を行わなければならない点に注意が必要です。
3. E2Eテストを実施するには?
E2Eテストは、テスト要件が膨大かつ複雑となりやすく、手間や負担、人的コストが増加しやすいものとなっています。そのため、可能な限り自動化を検討するとよいでしょう。
E2Eテスト自動化には、下記3つの利点があります。
● 時間とコストを削減できる
E2Eテストを自動化することによって、テスト実装にかかる時間を大幅に削減できます。加えて、人の手によって時間をかけながら検証する必要性がなくなるため、人的コストの削減につながる点もメリットです。
● 効率が上がる
E2Eテストを自動化することによって、検証作業の効率性も大幅に向上します。加えて、E2Eテストの効率化によって生まれた時間をほかの作業に充てれば、さらなる品質の向上にもつながるでしょう。
● 再現性が高い
自動化したE2Eテストでは、テストスクリプトを使用します。繰り返しテスト実装をする場合は、スクリプトを実行することによって再現性も大きく向上するでしょう。
E2E自動テストの利点が分かったところで、最後にE2Eテストを自動化する方法を順に説明していきます。
3-1. ツールを選ぶ
E2Eテストの自動化を決めた際は、まず初めにテスト自動化ツールの選定をしましょう。E2Eテスト自動化ツールとは、その名の通りシステム開発・ソフトウェア開発における各種テストの実装を自動化するためのツールです。
テスト自動化ツールには、デスクトップアプリに対応するものやモバイルアプリに対応するもの、さらにいずれにも対応できるものなど、さまざまなタイプがあります。開発しているシステムやソフトウェアのタイプによって、適切な自動テストツールを選ぶことが大切です。
3-2. 自動化の目的を明確にする
E2Eテストの内容によっては、自動化できない、またはすべきではないものもあります。加えて、あらかじめ自動化ツールを活用したテスト計画を立てなければ、かえってテスト工程やコストが増加する可能性もあるでしょう。
また、「テストの自動化=品質向上」と考える方も少なくありません。しかし、テストの自動化が効率性向上につながることはあっても、品質向上に直接つながるわけではないことも覚えておきましょう。大切なのは、テストの自動化によって生まれた時間を、どのような作業に充てるかという点です。
E2Eテストの自動化を行う際は、あらかじめ「なぜ自動化をするのか」「自動化により空いた時間はどのような作業に充てるか」といった目的・目標を明確にしておくとよいでしょう。
3-3. 課題を洗い出す
E2Eテストの自動化は、時間やコストの削減・効率性の向上・再現性の向上などあらゆるメリットがある一方で、いくつか直面しやすい課題もあります。課題まで想定して進めなければ、予期しない問題が発生し、かえって手間が増える可能性もあるため、あらかじめ課題を洗い出しておくことが大切です。
テスト自動化における特によくある課題が、メンテナンスやスケーリングです。テスト項目が多ければ多いほど、このような課題が生じやすくなることにも注意しましょう。
また、課題を洗い出すだけでは解決は導けません。しっかりと課題を解決させるためには、起こり得る問題に対応するさらなるツール・ソリューションや優秀な人材も必要となるでしょう。万が一問題が発生した際は早急に是正措置を講じることも、時間やコストの増大を最小限に抑えるポイントです。
まとめ
E2Eテストとは、システムが正しく動作するか・データフローが適切に機能するかどうかを、システム全体を通して検証するテストです。「ユーザー視点でのテストができる」「環境固有の問題を発見できる」というメリットがある一方で、テスト設計が難しく膨大な時間がかかりやすいといったデメリットもあります。
E2Eテスト特有のデメリットを可能な限り解消するためには、自動化ツールを用いたテストの自動化がおすすめです。しかし、テスト自動化ツールでE2Eテストを自動化する際には、「適切な自動化ツール選定」「自動化の目的の明確化」「課題の発見」が必要となる点にも留意しておきましょう。