スタブとは?ドライバ・モックとの違いや活用される主なテスト手法
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最終更新日:2025年04月16日 / 投稿日:2023年12月19日

ソフトウェア開発のテストプロセスにおいて、スタブを使用することには数多くのメリットがあります。
たとえば、未完成のモジュールや外部依存要素がある場合にも、これらの部分をスタブで仮想的に置き換えることで、開発中のシステムを独立してテストすることが可能です。これにより、開発チームはほかの部分の完成を待たずにテストを進められ、プロジェクトの全体的な進行速度を向上させられるでしょう。
この記事では、スタブの役割、ドライバやモックとの違い、主要なテスト手法への適用方法を分かりやすく解説します。
1.スタブとは?

システム開発においては、システムテストの段階で評価・品質測定を行います。システムテストにはいくつかの種類があり、あらゆる仕組みを活用して行われます。
スタブとは、ソフトウェア開発の初期段階で使用されるテスト専用のダミー部品です。実際の処理は行わないものの、開発中のほかの部分や外部ライブラリ、APIなどのインターフェースを提供するために使われます。特に、システムの異なる部分が未完成の場合や、下位モジュールが開発途中である場合に、スタブを利用してテストを進めることが可能です。
スタブにより、インターフェースの実装に間違いがないか、データの取り扱いに問題がないかなどを確認することが可能になります。
1-1.スタブとドライバの違い
スタブとドライバは、ソフトウェア開発におけるテスト用のダミー部品ですが、それぞれ異なる目的で使用されます。簡単に言えば、スタブはテスト対象の下位部分を代替し、ドライバはテスト対象の上位部分を代替するために使用されます。
・スタブ
テスト対象から呼び出されるダミーで、実際の処理を行わずに必要なインターフェースを提供する役割があります。たとえば外部システムへの依存がある場合や複雑な手順を経る必要があるモジュールのテスト時に使用され、テストの効率化に貢献します。
・ドライバ
テスト対象を呼び出す役割を持つダミー部品です。主に、上位モジュールが未完成の場合に下位モジュールのテストを行うために使用されます(例:ボトムアップテスト)。ドライバは必要な引数を渡し、返り値を受け取る機能を持ち、上位モジュールの代わりになって下位モジュールの動作を確認します。たとえば、サーバ側のレスポンスに応じたアプリの挙動をテストする際に、サーバ側の実装が未完成であってもドライバを用いてアプリ側の実装やテストを進めることが可能です。
1-2.スタブとモックの違い
スタブとモックも、ソフトウェア開発のテスト工程において用いられるツールですが、確認対象が主に異なります。スタブはテストの焦点を内部実装に絞り込む目的で使われるのに対し、モックはテスト対象の外部への出力や影響を検証するために使われます。
・スタブ
主に受信メッセージのテストに使用され、テスト対象が依存する外部のオブジェクトやモジュールをシンプルなダミーで置き換えることにより、テストの注目点をテスト対象の実装に限定します。スタブの使用により、テストは外部依存要素の実装に左右されずに行え、テスト対象の正確な動作を確認できます。
・モック
モックは、テスト対象が外部に対して正しい出力を行っているかどうかを検証するために使用されます。たとえば、テスト対象がログに書き出すデータの正確さや、外部システムへのリクエストの正確さをテストする際に役立ちます。
2.スタブのメリットとデメリット

スタブの主なメリットは、以下の通りです。
- 開発の効率化
- テストの円滑化
- シンプルな実装の実現
スタブを用いることで、複数人での開発が効率的に進行します。また、上位モジュールの「呼び出し処理」を開発序盤にテストできるため、テストプロセスを効率的に行えるでしょう。
さらにスタブは上位モジュールからの呼び出し機能のみを持ち、特別な処理は含まれていません。必要な返り値や変数を定数で持っているだけなので、実装がシンプルな点もメリットと言えるでしょう。
2-1.APIテストにおけるスタブのメリット
スタブは、APIテストにおいても重要な役割を果たします。未完成の外部サービスや依存するAPIが利用できない場合、スタブを用いることで、テスト対象のモジュールが外部APIを正しく呼び出せているかを確認できます。これにより、開発初期段階からAPIの呼び出し部分のテストを実施でき、問題の早期発見と修正が可能となります。
2-2.テスト自動化におけるスタブのメリット
テスト自動化の観点でもスタブは有効です。CI/CDパイプラインに組み込むことで、外部サービスの影響を受けずに安定したテスト環境を維持でき、継続的なテスト実施が可能になります。さらに、スタブを活用することで、外部サービスの応答時間やエラーレスポンスをシミュレートし、テストの多様性と信頼性を高めることができます。
テスト自動化とは?テストの種類と自動化のメリット&デメリット
2-3.スタブで加速するテスト自動化
1. 単体テストの支援
テスト対象の関数やクラスが外部に依存している場合にスタブを用います。スタブを使用することで、外部システムに依存せずに単体テストを実施できます。
例えば、DBアクセスやAPI通信が必要な場合、実際のDBやAPIを使わずにスタブを用いることでテストの安定性を向上できます。
2. テストの速度向上
実際の外部システムを使うと時間がかかる場合があるが、スタブを使うことで高速なテスト実行が可能になります。
例えば、実際のWebサービスを呼び出すと数秒かかりますが、スタブなら瞬時にレスポンスを返せます。
3. エッジケースや異常系のテストが容易
スタブを使うことで意図的に異常系のデータやエラーを返すことが可能になり、エラー処理のテストがしやすくなり、ネットワーク障害や500エラーのシミュレーション等、異常系のテストが簡単に行えます。
スタブはテスト自動化において欠かせない技術であり、特に単体テストや統合テストで依存関係を切り離すために使われます。
また、モックと組み合わせることで、より柔軟なテストが可能になります。
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2-3.スタブのデメリットと対策
スタブの主なデメリットは以下の通りです。
1. 実装と乖離する可能性がある
スタブは仮の実装であるため、実際のシステムと異なる動作をすることがあります。例えば、本番データでは予期しない値が入ってくることがありますが、スタブは開発者が定義した値しか返さないため、そういったケースの考慮が不足しがちです。本番環境と挙動が異なると、テストの信頼性が下がります。
2. 保守コストがかかり、開発スピードに影響する場合がある
スタブは本番コードと独立して作られるため、システムの変更に合わせて更新する必要があります。変更を反映しないと、正しくないテスト結果を得る可能性があります。
スタブを作成する時間や、更新・維持する手間が増えるため、短期間の開発では逆にコストがかかることがあります。
3. 外部システムとの相互作用の検証ができない
スタブはあくまで簡易的な代替物なので、実際のAPIやデータベースとの通信を再現できません。本番環境で発生するエラー(ネットワーク遅延、認証エラーなど)を考慮できないことがあります。
スタブのデメリットを軽減するために
スタブを利用する際は、以下の点に気をつけるとデメリットを軽減できます。
- 実装が確定している部分のみスタブ化する
- スタブを頻繁に更新し、実装と乖離しないようにする
- 統合テストで実際の環境との相互作用を検証する
スタブは便利ですが、適切に使わないとテストの信頼性を損ねる可能性があるので注意が必要です。
3.スタブが活用される主なテスト手法2選
続いて、スタブが活用される主なテスト手法として単体テスト(コンポーネントテスト)・結合テストのトップダウンテストについて、各テストの概要とスタブの役割を分かりやすく解説します。
3-1.単体テスト(コンポーネントテスト)
単体テスト(コンポーネントテスト)は、ソフトウェア開発過程における初期段階で行われる重要なテストです。個々のコンポーネントやモジュールが正しく機能するかを検証することに焦点を当てます。単体テストの目的は、各部分が個別に期待通りに動作するかどうかを確認し、後の統合テストやシステムテストでの問題を予防することにあります。
開発が進行中でほかのチームやサブシステムがまだ完成していない場合、スタブを使用してテスト対象のコンポーネントがほかの部分に依存しない状態でテストを行うことが可能です。スタブは、未完成のモジュールや外部システムの代替となり、必要なデータや返り値を模擬的に提供して、実際の環境が整っていない場合でもテストを可能にします。
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3-2.結合テストのトップダウンテスト
結合テストは、ソフトウェア開発において複数のモジュールやコンポーネントが互いに連携して正しく機能するかを検証するテストです。このプロセスの一環として、トップダウンテストが用いられます。
トップダウンテストは、ソフトウェアの上位モジュールから始め、徐々に下位モジュールへと進んでいく方法です。システムの主要機能やフレームワークの初期段階におけるテストを可能にし、早期に重大な設計上の問題を発見することを目指します。テストの初期段階では、下位モジュールやコンポーネントがまだ開発中である状態が一般的です。この場合、スタブを使用して未完成の下位モジュールを仮の実装として置き換えられます。上位モジュールが下位モジュールに正しく依存しているか、適切なデータや制御フローを下位モジュールに渡せているか、といった内容をテストすることが可能です。
4.スタブが活躍する開発手法

テスト駆動開発(TDD)では、実装前にテストコードを書き、それに合わせてプログラミングを行う手法です。
TDDでは、具体的な設計内容をテストコードに落とし込むことで、プログラミングと設計のミスマッチを即座に検知し、短期間でフィードバックを得られるという大きな利点があります。この過程で、実装されていないモジュールや外部システムに依存するコードの部分にスタブを用いることが可能です。スタブを使えば、まだ完成していない部分の影響を受けずにテストを進め、開発プロセスをスムーズに進行させられます。
一方で、スタブを大量に作成する必要がある場合、追加の工数が発生し、テストと開発のプロセスに影響を及ぼす可能性がある点に注意しましょう。
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5.スタブを活用してテストを行うときの注意点
スタブを活用してテストを行う際には、いくつかの注意点があります。
まず、スタブによるテスト結果を過信しないようにしましょう。スタブはダミー部品であり、実際の動作を完全に模倣するものではありません。そのため、完成したモジュールと結合した際に予期せぬ不具合が発生する可能性があります。したがって、スタブを使用したテストは一時的なものとして考え、最終的な結合テストで十分な検証を行うべきです。
また、スタブの作成には工数がかかり、テストとプログラミングの工程に影響を与えるケースがあります。計画的に使用し、適切なリソース管理を行うことが重要です。
まとめ
スタブは、特にプロジェクトの初期段階において有効な手段であり、単体テストや結合テストのトップダウンテストなどに活用されます。
スタブを用いれば、コンポーネントテストはより効率的かつ低コストで実施することが可能です。個々のコンポーネントが独立して機能するかを確認すれば、後の開発段階でのリスクを最小限に抑えられます。また、スタブの使用によって、テストの自動化もしやすくなるでしょう。結果的に開発プロセス全体の迅速化と品質向上が期待できます。