可用性とは?低下した場合に起こり得るトラブル・高めるための方法も
COLUMN
最終更新日:2026年02月20日 / 投稿日:2026年02月20日

企業活動の多くはITシステムに支えられており、業務処理や顧客対応、各種サービスの提供など、日々の運用において欠かせない存在となっています。そのため、システムを安定して利用できる状態を維持することは、業務効率の確保や顧客満足度の向上の観点からも重要な課題です。
安定したシステム運用において重視される要素の1つが、「可用性」です。可用性とは、必要なときにシステムやサービスを問題なく利用できる状態を示すものであり、低下すると業務停止や信頼低下など、企業活動に大きな影響を及ぼすおそれがあります。
そこで今回は、可用性の概要や情報セキュリティにおける位置付け、低下した場合に起こり得るトラブル事例、さらに可用性を高めるための主な取り組みについて詳しく紹介します。
1. 可用性とは?

可用性とは、 必要なときにシステムやサービスを問題なく利用できる状態を維持する稼働能力 のことです。情報セキュリティを構成する3要素の1つであり、英語で「Availability」とも呼ばれます。
情報セキュリティの分野では、システムの停止や障害によって利用できなくなる事態を防ぎ、利用者が求めるタイミングで安定してアクセスできることが重要とされています。
また、可用性は単にシステムが稼働しているかどうかだけで判断されるものではありません。障害発生時にどれだけ短時間で復旧できるか、障害による影響をどの程度抑えられるかといった観点も含めて評価されます。
近年では、万が一トラブルが発生してもサービス停止を最小限に抑え、継続的に利用できる状態を維持する「高可用性(High Availability)」を実現することが重視されています。
このように可用性は、システムの安定した運用を支える基盤となる要素であり、企業の信頼確保や事業の継続性を維持するうえでも欠かせない概念と言えるでしょう。
1-1. 情報セキュリティの3要素|可用性以外の2つの要素
情報セキュリティの3要素には、可用性のほかに「機密性(Confidentiality)」と「完全性(Integrity)」があり、それぞれの頭文字を取って「CIA」とも呼ばれています。
●機密性(Confidentiality)
許可された人だけが情報にアクセスできる状態を指します。
●完全性(Integrity)
情報が正確かつ最新の状態で保たれ、改ざんや破損が発生していない状態を指します。
可用性・機密性・完全性の3要素は、 情報の安全な管理のほか、不正利用や改ざん、利用不能といったリスクを防ぐうえでも欠かせない基本的な考え方 であり、それぞれが相互に関係しながら情報の安全性を支えています。
1-2. 可用性と信頼性・サービス継続性の違い
可用性と混同されやすい言葉として、「信頼性」と「保守性」があります。これらは関連する概念ですが、それぞれ意味が異なります。
●信頼性
システムが一定期間にわたり安定して正常に動作し続ける能力のことで、「そもそも障害が発生しにくいか」という観点で評価されます。
●保守性
システムに障害が発生した際に、迅速かつ容易に修復・復旧できる性質を指します。
このように、 可用性は「利用できる状態」、信頼性は「故障しにくさ」、保守性は「復旧のしやすさ」と、それぞれシステムの安定運用を異なる側面から支える要素 です。
なお、近年の情報セキュリティでは、従来の3要素に加えて信頼性などを含めた「情報セキュリティ7要素」も重視されており、より総合的な管理が求められています。
2. 可用性を確保できない場合に起こり得るトラブル事例3つ

可用性が確保できていないシステムでは、単に「サービスが利用できない」という不便さにとどまらず、企業の事業運営や収益、さらには社会的な評価にも大きな影響を及ぼすおそれがあります。
特に近年は、多くの業務やサービスがITシステムに依存しているため、システム停止による影響範囲は広がりやすい傾向にあります。
そこで次に、可用性の低下によって発生する代表的なトラブル事例を紹介します。
2-1. 業務やサービスの停止による機会損失・売上減少
可用性が確保されていないシステムでは、障害やアクセス集中などによってサービスが停止しやすくなり、売上機会を直接的に失う可能性があります。特に、ECサイトやオンライン予約サービスなどは、システムが停止している間は商品購入や申し込みができず、収益の影響が避けられません。
また、システム停止が発生した場合には、復旧のためにエンジニアや運用担当者が対応に追われることになります。本来であれば新機能の開発やサービス改善に充てるはずだった人的リソースが障害対応に割かれるため、 長期的な事業成長の機会損失にもつながります。
さらに、サービス提供契約の内容によっては、利用者への返金や違約金の支払いなどが発生する場合もあり、企業にとって大きな経済的損失となるおそれがあります。
2-2. 企業・サービスの信頼低下
可用性の低さは、企業やサービスに対する信頼の低下にも直結します。利用者にとって、必要なときにサービスが使えない状況は大きなストレスとなり、満足度の低下を招く原因となります。
現在は、多くの分野で競合となるサービスが存在しており、 「つながりにくい」「頻繁に停止する」といった問題は、利用者が他社サービスへ乗り換えるきっかけになりやすい状況 です。
また、一度「不安定なサービス」という印象が定着してしまった場合、信頼を取り戻すためには多くの時間とコストを要します。
SNSや口コミサイトなどを通じてトラブルの情報が拡散されると、サービスを利用していない人にもネガティブな印象が広がり、企業全体のブランド価値に影響を及ぼすおそれもあることに注意が必要です。
2-3. セキュリティリスク増大のおそれ
可用性の低下は、セキュリティ面のリスクを高める要因にもなります。例えば、システム障害によって認証機能やアクセス制御が正常に動作しなくなると、正規の利用者が必要な情報にアクセスできなくなり、業務に支障が生じる可能性があります。
さらに、脆弱性が放置されていたり、障害対応中で監視体制が十分でなかったりするシステムは、攻撃者にとって格好の標的となります。万が一サイバー攻撃を受けると、情報漏えいやデータ改ざんなどの重大なインシデントにつながるおそれも否定できません。
このように、可用性の問題は単なる利便性の低下にとどまらず、 企業の安全性や信頼性にも大きく関わる重要な課題であり、適切な対策を講じることが不可欠 です。
3. 可用性を高めるための主な取り組み3選

可用性を確保できない場合に発生するトラブルは、単なるシステム停止にとどまらず、売上減少や信頼低下、セキュリティリスクの増大など、段階的に影響が広がっていくのが特徴です。
そのため、障害が発生してから対処するのではなく、あらかじめ障害が起こることを前提としたシステム設計や運用体制を整えておくことが重要です。
最後に、可用性を高めるための主な方法を3つ紹介します。
3-1. システムの冗長化によって障害に強い構成をつくる
可用性を高めるための基本的な対策として挙げられるのが、システムの冗長化です。
冗長化とは、 サーバーやネットワーク機器、データなどをあらかじめ複数用意しておき、いずれかに障害が発生した場合でも、別の機器や系統が代わりに処理を引き継ぐ仕組み を指します。
同じ役割をもつサーバーを複数台構成にしておくことで、1台が停止してもサービス全体の停止を防ぐことが可能です。このように、「単一の障害がシステム全体の停止につながらない構成」を実現することは、可用性の向上につながります。
また、定期的にバックアップを取得し、障害発生時に迅速に復元できる体制を整えておくことも重要です。
ただし、冗長化はサーバー台数の増加や構成の複雑化を伴うため、導入・運用コストが高くなりやすい点には注意が必要です。そのため、 システムの重要度や停止時の影響範囲を踏まえたうえで、適切な範囲で冗長化を行うこと が求められます。
3-2. クラウドサービスを活用(移行)する
オンプレミス環境で十分な可用性対策を行うことが難しい場合には、クラウドサービスの活用も有効な選択肢の1つです。
物理的な機器に依存するオンプレミス環境と比べて、仮想化されたクラウド環境では、障害発生時の切り替えや復旧を迅速に行いやすい点がメリットです。自社で大規模な設備を保有しなくても、安定したシステム運用を実現しやすくなるでしょう。
一方で、クラウドであっても障害のリスクが完全になくなるわけではありません。クラウドサービスではSLA(サービス品質保証)が定められており、可用性の保証範囲や補償内容が明確化されています。
そのため、すべての可用性対策をクラウド任せにするのではなく、 自社で管理すべき範囲を把握したうえで、どのシステムをクラウドに移行するかを慎重に検討することが重要 です。
3-3. 各種ツールを組み合わせる
可用性の確保は、システム構成の見直しやクラウド移行だけで完結するものではなく、日常的な運用管理の取り組みも重要な要素です。
特に、「障害の発生を早期に検知する」「障害による影響を最小限に抑える」という観点では、監視ツールやログ管理ツールの活用が有効です。近年では、AIを活用してシステムの異常兆候を検知し、障害の予兆を把握する仕組みも導入されています。
また、可用性はシステムの改修や機能追加などの変更時にも大きく影響を受けます。変更に伴う不具合が原因でシステム停止が発生するケースもあるため、変更時の品質管理が重要です。
しかし、すべての動作を人手で確認する方法には限界があり、確認漏れによるトラブルが発生する可能性があります。そこで有効なのが、 テスト自動化ツールの活用 です。
テスト自動化ツールを導入することで、システム変更時の動作確認を効率的かつ安定的に実施でき、品質のばらつきを防ぐことが可能になります。その結果、不具合によるシステム停止のリスクを低減でき、可用性の維持・向上につながります。
このように、 各種ツールを適切に組み合わせて運用体制を強化することが、可用性の高いシステム運用を実現するための重要なポイント です。
まとめ
可用性とは、システムやサービスを必要なときに安定して利用できる状態を維持するための重要な要素です。可用性が低下すると、業務停止や売上減少、信頼低下などのリスクにつながるため、冗長化やクラウド活用、日常的な運用管理などを通じた対策が求められます。
システム変更時の品質確保には、テスト自動化が有効です。知識がなくても簡単にテスト自動化を進めたい人は、コーディング不要でテストスクリプトをつくれるテスト自動化ツール「ATgo」の導入もぜひご検討ください。











