機能要件と非機能要件の違い|検証方法やテスト効率化に向けた方法も
COLUMN
最終更新日:2025年11月25日 / 投稿日:2025年11月25日

ユーザーが安心して使えるソフトウェアを開発するためには、「何ができるべきか」だけでなく、「どう動くべきか」を明確にしたシステム構築が欠かせません。特に、規模が大きくなるほど要件定義の精度が開発効率や品質に直結します。
要件定義を適切に進める上で重要となるのが、機能要件と非機能要件です。いずれもシステム開発の土台となる点は共通していますが、目的や内容は大きく異なり、テスト方法にも明確な違いがあります。双方を正しく理解することが、高品質なシステムを構築する第一歩と言えるでしょう。
そこで今回は、機能要件と非機能要件の意味や特徴、項目別の違い、さらに効率的に検証するためのポイントまで分かりやすく解説します。
1. 機能要件とは?

機能要件とは、システム・ソフトウェア開発において、クライアント(顧客・ユーザー)から求められる要件のこと です。分かりやすく説明すると、「要件定義のうち、必ず搭載すべき機能」と言えるでしょう。
例えばECサイトの構築であれば、下記のような機能が該当します。
- ログイン認証
- 商品検索
- カート(買い物かご)への商品追加
- オンライン決済
- 購入履歴の確認 など
ECサイトにおいて上記の機能はクライアントが「最低限備わっていてほしい」と考える部分であるため、要件定義の段階で必ず盛り込むべき項目です。
機能要件はヒアリングでも把握しやすく、実装されていなければプロジェクトとして成立しません。あくまでも「当然のように使える状態」を保証するための要件であり、 システム開発の土台となる重要な要素 となります。
2. 非機能要件とは?

非機能要件とは、システムに求められる具体的な機能ではなく、システム全体の品質・性質を定める要件のこと です。機能要件が「何ができるか」を表すのに対し、非機能要件は「その機能をどのような品質で提供するか」を表すのが特徴で、処理速度やセキュリティなどのシステムの基本的な質が決まる要素と言えます。
例えばECサイトの構築であれば、下記のような機能が該当します。
- 商品検索の結果を〇秒以内に表示させる
- 24時間年中無休で利用できるようにする
- ユーザーの個人情報を堅固に保護する
- 最大〇人が同時にアクセスしても一定の処理速度を保つ など
非機能要件は、 ユーザーがシステムを使う際の快適さ・安全性・安定性に直結し、プロジェクトの満足度を大きく左右します。 たとえ機能が揃っていても、「遅い・落ちる・使いにくい・守られていないシステム」では、ユーザーは離れてしまいます。
機能要件とセットで非機能要件を定義することで、システム全体の品質を高め、開発後の運用コスト削減にもつながります。
2-1. 非機能要件における6つのカテゴリ
独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が公開する「非機能要求グレード」では、非機能要件を6つのカテゴリに分類しています。この 非機能要求グレードを基準として整理することで、非機能要件を抜け漏れなく定義できます。
【非機能要求グレード】
| カテゴリ | 概要 | 分類(中項目) |
|---|---|---|
| 可用性 | システムをストップさせずに稼働し続けるための要件 |
|
| 性能・拡張性 | システムの処理性能や応答速度、さらに将来的な負荷増にも対応できる拡張性を保証するための要件 |
|
| 運用・保守性 | スムーズな運用に向けた仕組みや、障害発生時の調査・修正のしやすさに関する要件 |
|
| 移行性 | 新システムへのデータ・機能の移行や、移行にともなう計画・データ整合性の確保に関する要件 |
|
| セキュリティ | 不正アクセス対策・データ保護・認証方式・ログ管理など、システムを安全に利用するための要件 |
|
| システム環境・エコロジー | ハードウェア・ミドルウェア・ネットワークなどの利用環境や、省電力・環境配慮の方針に関する要件 |
|
出典:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構「システム構築の上流工程強化(非機能要求グレード)紹介ページ」
3. 【項目別】機能要件と非機能要件の違い

機能要件と非機能要件は似たような名称で扱われることが多いものの、実際にはシステム開発において全く異なる役割を担う対照的な要件です。しかし、プロジェクト成功のためにはいずれも欠かせません。
ここからは、機能要件と非機能要件の違いを、目的・役割、特徴、定義プロセス、検証方法の4つの視点から詳しく紹介します。
3-1. 目的・役割
機能要件の目的は、クライアントが求める機能を実現することにあります。ECサイトにおけるログイン機能や検索機能のように、 「このシステムで何ができるか(機能)」を具体的に示す役割をもちます。
一方、非機能要件の目的は、実装した機能を「安全・快適・安定的に使える状態にすること」です。いわば 「どのように動くべきか(品質)」を定める要件 であり、具体例としてはレスポンスの速さ、セキュリティ対策、障害発生時の復旧時間などが挙げられます。
このように、 機能要件は「機能そのものの実現」、非機能要件は「品質の担保」と、役割が明確に異なる ことをまず覚えておきましょう。
3-2. 特徴
機能要件は、 クライアントやユーザーから直接ヒアリングして把握しやすいのが特徴 です。成果物(機能)が目に見える形で確認できるため、関係者間での認識合わせもしやすい要件と言えます。
一方、非機能要件は開発側が主体となって検討するケースが多く、機能要件と比べて「言語化されにくい」「定量化が難しい」という特徴があります。
加えて、非機能要件の成果は「高速に動く」「落ちにくい」「安全に使える」などの抽象的な評価となりやすく、定義・検証の難易度が高い傾向があります。結果として、十分に議論されないまま開発に進んでしまうケースも少なくありません。
特に大規模システムの場合、非機能要件の定義不足はトラブルの大きな原因にもなり得るため、要件定義段階でしっかり詰めておくことが不可欠です。
3-3. 定義・決定の流れ
機能要件と非機能要件は、いずれも定義・決定にいたるまでの型(枠組み)こそ似ていますが、実際のプロセスや性質は大きく異なるため、同じ手順で進められるわけではありません。ここでは、機能要件と非機能要件それぞれの定義・決定の流れを紹介します。
| 【機能要件】 | |
|---|---|
| STEP(1) | 操作フローを整理する |
| STEP(2) | 必要な機能を一覧化する |
| STEP(3) | 詳細要件を整理する |
| STEP(4) | 優先度・開発段階を決める |
機能要件は、 「ユーザー視点での具体的な操作」をベースに整理する点が大きな特徴 です。ヒアリングやワークショップを通じてクライアントと合意形成しやすく、比較的イメージを共有しやすい領域と言えます。
| 【非機能要件】 | |
|---|---|
| STEP(1) | システム特性を整理する |
| STEP(2) | ベンダー側で素案をつくる |
| STEP(3) | 合意形成を図る |
非機能要件は数値化が難しく、適切な基準づくりにも専門性が求められる領域 です。システム全体の品質を左右するため、ベンダーが主導となって丁寧かつ詳細に要件の精度を高めていく必要があります。特に素案をつくるときは、「レスポンス〇秒以内」「最大〇ユーザーまで同時接続可能」などの具体的な目標値や基準の設定が欠かせません。
3-4. 検証方法(テスト種類)
機能要件と非機能要件は、検証方法(テスト)の観点においても大きく異なることが特徴です。最後に、機能要件と非機能要件それぞれのテスト種類について紹介します。
| 【機能要件(機能テスト)】 | |
|---|---|
| 単体テスト(コンポーネントテスト) | 単体機能が仕様通り動作するか確認するためのテスト |
| 統合テスト | 複数の機能を組み合わせた際に問題なく動作するかを確認するためのテスト |
| システムテスト | システム全体として機能が正しく連携するかを確認するためのテスト |
| 回帰テスト | 修正や追加によって既存機能に影響を及ぼさないか確認するためのテスト |
| 受け入れテスト | ユーザー視点で要求通りに動作するか確認するためのテスト |
| 【非機能要件(非機能テスト)】 | |
|---|---|
| 性能テスト(パフォーマンステスト) | レスポンス速度・処理性能などが要求値を満たしているか確認するためのテスト |
| セキュリティテスト | 脆弱性の有無や不正アクセス対策の有効性を検証するためのテスト |
| ユーザビリティテスト | 使いやすさや操作性(UI/UX)を評価するためのテスト |
| 負荷テスト(ストレステスト) | 高負荷環境下でもシステムが耐えられるか確認するためのテスト |
| 運用テスト | バックアップ・ログ管理・復旧手順といった運用・保守面の品質を確認するためのテスト |
このように、機能要件や非機能要件では、それぞれ目的に応じた多様なテスト手法があります。単に種類を知るだけでなく、 定義した機能や品質目標に応じて適切なテストを実施することが重要 です。
まとめ
機能要件と非機能要件はいずれもシステム開発において欠かせない要素であり、適切に要件定義することがシステムの品質確保につながります。要件を満たしているかを確認するためにはテストが不可欠であり、効率的な検証にはテスト自動化ツールの活用が有効です。
ATgoは、ローコードでテストスクリプトを作成できるテスト自動化ツールです。初心者にも扱いやすいほか、インストール不要・オフライン環境でも利用可能な点も特徴となっています。テスト工数の削減とエビデンスの標準化を同時に実現したいと考えている担当者の方は、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。













