TDDとは?開発サイクルと導入のメリット・注意点を解説
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最終更新日:2023年07月18日 / 投稿日:2023年07月14日
システム開発の現場では、TDD(テスト駆動開発)という開発手法を耳にすることもあるでしょう。TDDとはテストファーストを原則とした開発手法であり、バグを早く発見できる、開発者の負担を減らせるなどの利点があります。
当記事では、TDDとはどのような開発手法なのか、手順とともに導入するメリットと注意点を解説します。テストを積み重ねながら、なるべく重大なバグの発生を抑えて開発を進めていきたい方は、ぜひTDDの導入を検討してください。
1.TDDとは?
TDDとは、テスト駆動開発(Test-Driven Development)の略称です。ソフトウェア開発手法の1つで、本体コードより先にテストコードを記述することが特徴です。
「設計・実装・テスト」という順ではなく、「テスト・実装・リファクタリング」の順で開発を行うため、実装後にテスト通過ができないといったトラブルを予防できます。
1-1.テストファーストとは?
テストファーストは、TDDと似た意味で使われる言葉で、プログラムの実装前にテストを行うという原則・方法論を指します。
テストファーストの原則にしたがって開発を行う場合、まずプログラムの要件をもとに仕様を決定し、プログラムが最終的に合格すべきテストコードを記述するのが基本です。その上で、テストコードを通過することを確認しながら、手順を踏んでプログラムのコーディングを進めます。
テストファーストを実現するには、膨大な回数のソフトウェアテストを繰り返し行う必要があります。そのため、テストは手動ではなく、テストツールなどの自動化環境を用いて行うのが一般的です。
1-2.TDDの開発サイクル
TDDを用いる場合、「レッド」「グリーン」「リファクタリング」というサイクルで開発を進めます。各用語の意味は、以下の通りです。
レッド |
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TDDの基本となるテストコードを記述する開発工程です。コード本体がない状態でテストコードのみを書くため、この段階でのテストは必ず失敗します。テストが失敗すると赤色でエラーが出ることから、この工程は「レッド」と呼ばれます。 |
グリーン |
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テストへの通過を目的として、本体コードを記述する工程です。この段階では、テストをクリアすることが重要であり、完璧なコードを目指す必要はありません。テストを通過すると緑色のバーが表示されるため、この工程は「グリーン」と呼ばれます。 |
リファクタリング |
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グリーンの工程で書いたコードの内部構造を整理し、洗練された状態に整える開発業務です。テストを通過したプログラム自体の構造は変えないよう、注意して作業を行いましょう。なお、プログラムの規模が大きくなってから全体のリファクタリングを行うと、修正の手間が増大します。そのため、TDDのサイクルを繰り返しながら、少しずつ開発・実装を進めていくのがポイントです。 |
「レッド」「グリーン」「リファクタリング」のサイクルを繰り返すことで、規模の大きいプログラムでも、効率的に開発を進められます。
2.TDDのメリット3つ
TDDには、スムーズなプログラム開発に貢献するさまざまなメリットがあります。ここでは、開発にTDDを用いるメリットを詳しく解説するため、導入を検討している方はぜひ参考にしてください。
2-1.バグを早く検知できる
TDDでは初期段階でテストコードを記述し、小まめにテストを繰り返しながら開発を行うため、バグをいち早く検知できます。早い段階でバグを発見できれば、開発プロセスが大きく進んでから発見されるより修正の手間が少なく済み、作業効率の向上に効果的です。
さらにグリーンの工程では、まずテスト通過を目的に必要最低限の本体コードを書くため、コードがシンプルになり、バグの発生自体も減らしやすくなります。
また、決まったサイクルを繰り返しながら順序立てて開発を進めるので、進捗状況や作業ステップを見える化でき、開発の進行管理をしやすくなることもメリットです。
2-2.システムの理解度が深まる
本体コードの記述前にテストコードを書くというTDDの基本方針により、エンジニアのシステムへの理解度が高まる点もメリットです。
テストコードを作成するには、プログラムの要件や仕様について、正確に理解している必要があります。先にテストコードを作成すると、システムについて深く理解した状態で本体コードの記述を始めることが可能です。また、「レッド」「グリーン」「リファクタリング」のサイクルを何度も繰り返せば、テスト対象となるプログラムへの理解が深まります。
システムの理解度が深まると、実装漏れや仕様齟齬などのミスにも早期に気づきやすくなり、完成度の高いシステムを効率良く開発できます。
2-3.開発者の負担が減る
TDDを用いれば、エンジニアの身体的・精神的負担も軽減可能です。プログラムの開発が進んだ後にバグを発見したり、追加開発やリファクタリングでプログラムが壊れたりすると、エンジニアに大きな負担がかかります。
しかしTDDの場合は、小まめにテストを行いつつ着実に実装を進めるため、膨大な修正作業が発生するリスクを抑えられ、エンジニアも安心して働きやすくなります。バグの修正や機能追加などを行う際、他の部分に異常が出ないか確認するリグレッションテストを行えることも嬉しいポイントです。
3.TDDを行う時の注意点
TDDを用いることで、システム開発を効率良く進めやすくなる上、エンジニアの負担も軽減できます。しかしTDDには、事前に知っておくべき注意点もあります。ぜひ、メリットと注意点の両方を理解した上で、TDDの導入を検討してみてください。
3-1.開発初期段階は時間がかかる
TDDを用いたシステム開発の初期段階では、慣れ親しんだ開発技法よりも時間がかかり、効率が悪く感じられる可能性があります。先述の通り、本体コードより前にテストコードを作成するには、プログラムの要件や仕様についての深い理解が必要です。
TDDによる開発実績が少ないエンジニアの場合、テストコード自体の作成に手間取ったり、修正に時間がかかったりすることがあるでしょう。意図した通りのテストコード作成ができず、「レッド」「グリーン」「リファクタリング」のサイクルがスムーズに回らないケースも珍しくありません。
そのため、開発プロジェクトにTDDを導入する場合は、チーム内部で導入の目的や意義、情報をしっかりと共有することが大切です。TDDを用いたサービス開発に慣れれば、高品質なテストコードを作成し、スムーズにサイクルを回せるようになります。
3-2.テスト項目に抜け漏れがないようにする
TDDを用いる場合は、テストファーストの原則にしたがって、抜け漏れなくテストを行いましょう。せっかくTDDを導入しても、テスト項目にミスや漏れがあり、後からトラブルが発覚しては意味がありません。
抜け漏れなくテストを行うには、エンジニア同士でテストコードを確認し合い、ミスの発生を予防しましょう。また、システムの品質保証のために、ツールを用いてテストを自動で行う環境を整えることも重要です。テスト実行を自動化すれば、テスト作業を効率的に行えるだけでなく、ヒューマンエラーも排除しやすくなります。
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まとめ
TDDとはテスト駆動開発のことであり、ソフトウェア開発の現場においてテストコードを先に記述して開発を進める方法を言います。手順としてはテストコードのみを書く「レッド」、テストを通過できるコードを書く「グリーン」、書いたコードを洗練する「リファクタリング」の工程に分かれます。
TDDではテストが頻繁に発生するため、テスト自動化ツールの導入をおすすめします。TDDを導入すれば、開発者の負担を減らすこともできるでしょう。