単体テストとは?メリット・デメリットと手法から3つの注意点まで
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最終更新日:2023年06月05日 / 投稿日:2022年08月31日
ソフトウェア開発の現場では、さまざまなテストが繰り返されます。多くのテストの中でも、単体テストは重要な役割を果たすテストです。とはいえ、まだソフトウェア開発に携わって間もない人の中には、「単体テストの詳細がよく分からない」という人もいるのではないでしょうか。
今回は、単体テストの目的や方法に加えて、実施するメリット・デメリットなどを解説します。単体テストを実施する際の注意点なども把握し、実際にテストを行う場面で生かせるようにしましょう。
1.単体テストとは?必要性と結合テストとの違い
単体テスト(ユニットテスト)とは、ソフトウェアの開発工程においてプログラム作成が終了した時点で、プログラムが問題なく動作するかどうかを試すためのテストです。また、単体テストの後に実施されるテストは「結合テスト」と呼ばれます。2つのテストの特徴や違いは下記の通りです。
単体テスト |
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結合テスト |
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テスト要素が不足していたり不備に気づかなかったりした場合は、後に行われる結合テストで問題が発生します。そのため、単体テストでできる限り多くの不具合を取り除くことが大切です。
1-1.単体テストのメリット3選
単体テストを実施することで得られる主なメリットは、以下の3つです。
リファクタリングが実施しやすくなる |
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単体テストが正しく実施されていれば、デグレードを恐れる必要がありません。そのため、モジュールの挙動は触らずにプログラムの内部構造を変える「リファクタリング」を行いやすくなります。 |
テストで不具合が見つかってもすぐに修正できる |
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細かな単位でテストの実施が可能であり、不具合が見つかった際も原因の特定や変更が比較的簡単です。 |
コストを抑えつつ効率的にフィードバックが得られる |
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データベースにアクセスする必要がなく、メモリ上で単体テストを実施できるため、テスト自動化を簡単に行えてコストが抑えられます。また、コードの修正に対しても高速でフィードバックが得られます。 |
1-2.単体テストのデメリット3選
単体テストを行う主なデメリットは、以下の3つです。
テストコードの作成に時間がかかる |
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細かな単位でテストコードを書く必要があるため、工数の増加によってテストコードの作成に時間がかかります。しかし、最初に問題点を見つけておくほうが、長期的に考えれば効率的と言えるでしょう。 |
妥協した単体テストにはリスクがある |
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テスト設計者の技術をはじめ、テストコードの作成にかかる時間やコストなどを考え、品質に妥協せざるを得ない場面が出てきます。テストデータが不足している場合は、後の工程で問題が発生するケースもあります。 |
外部品質の妥当性は確認できない |
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システム開発の生産性を高めることができても、外部品質に関しての保証はできません。プログラム全体との連携の確認には、結合テストを行う必要があります。 |
2.単体テストの手法2つ
単体テストには、ホワイトボックステストとブラックボックステストの2つの手法があり、異なる視点でプログラムの確認が行えます。単体テストを実施する前に、それぞれのテスト方法がどのように機能して結果が出るのか、事前に知っておきましょう。
ここでは、単体テストの手法に関して、ホワイトボックステストとブラックボックステストの詳細を解説します。
2-1.ホワイトボックステスト
ホワイトボックステストは「エンジニア目線」のテスト手法であり、システムの内部構造に着目し、プログラムが意図した通りに機能するか確認するテストです。テストを実施する際は、網羅基準と呼ばれる下記の内容を設定します。
- 命令網羅:すべての命令を1回は必ず通す
- 分岐網羅:すべての分岐を1回は必ず通す
- 条件網羅:条件分岐で「真」と「偽」の値を必ず1回ずつ通す
- 複数条件網羅:条件分岐で想定できるあらゆる組み合わせを通す
ホワイトボックステストは「詳細設計書」をもとに、プログラムの開発者によって実施されることが一般的です。
2-2.ブラックボックステスト
ブラックボックステストは「ユーザー目線」のテスト手法であり、システムの内部構造を考慮せず、要求される仕様を満たしているかどうか確認します。仕様書が手元にあれば、内部構造を把握していない状態でも実施できることが大きな特徴です。
ブラックボックステストの主な手法には、同値分割法と境界値分析があります。それぞれの詳細は下記の通りです。
同値分割法 | 同じ結果となる値を分類し、必ず1回は各同値クラスから代表値を選ぶ手法 |
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境界値分析 | 仕様の条件から最小値や最大値などの境界値を選びテストする手法 |
同値分割法の実施によって偏った値ばかりを確認する状況を防ぎ、対象範囲の値を効率的に網羅できます。また、境界値分析では記載や判断ミスなどがよく起こる境界付近を検証でき、バグを発見しやすくなります。
3.単体テストを実施する際の注意点3つ
単体テストが正しく実施されなければ、後々問題が発生して大がかりな修正を必要とするケースも発生します。単体テストは慎重に実施する必要があるため、実施する場面では下記の3点を押さえておきましょう。
- 単体テストの目的を明確に定める
- 必要なツールを事前に揃える
- 仕様書はできるだけ分かりやすく書く
ここでは、単体テストを実施する際の注意点について解説します。
3-1.ゴールを明確に定めておく
単体テストのテストケースが少ない状態ではテストそのものの品質が低下するため、ある程度の実施回数が必要になります。ただし、テスト対象を大幅に増やすとリソース不足につながり、非効率的です。
対処法として、クリアすべき課題を事前に設定したり、単体テストの範囲をあらかじめ定めたりしておけば、不要な工数を減らせるでしょう。
3-2.必要なツールが揃っているか確認する
単体テストを実施するにあたって、テスト用モジュールに加えていくつかのツールが必要になることもあります。プログラムにもよりますが、具体的には下記のツールを用意しましょう。
- 入力データをテスト用プログラムに渡すドライバ
- 出力データをテスト用ドライブから受け取るスタブ
- 単体テストのデータを作成する際に必要なツール
- 単体テストの結果を分析する際に必要なツール
単体テストを実施する時点では、未完成のプログラムもあることを考えて、代用となるドライブやスタブを作成する必要があります。また、テスト用のデータ作成や結果検証など、一連の流れを頭に入れておきましょう。
3-3.分かりやすい単体テスト仕様書を書く
仕様書のテスト観点が不十分な場合は、プログラムが正常に作動しなかったり、要件通り作動しているのか分からなかったりなど、あいまいな結果になるケースがあります。完成度の高い仕様書の作成が単体テストの成功に直結するため、下記のポイントを押さえながら単体テスト仕様書を作成しましょう。
- 機能を漏れなく洗い出した上で、テストをプランニングする
- 全体像が分かりやすいように、観点を一覧にして仕様書にまとめる
- 仕様書が完成した時点で、設計者や要件定義をした人に確認してもらう
まとめ
単体テストは、一般的にチームの新人エンジニアに任せられることが多いタスクです。初めてテスト作業を実施するときは、プログラム解析に時間がかかることもあるでしょう。しかし、テスト設計の大切さやプロジェクトの全容を学べる大きなチャンスとも言えます。
単体テストは結合テストよりもシンプルであり、大きな修正処理が必要となるリスクも少ないため、それぞれのステップを丁寧に進めていけば問題は起きにくいでしょう。単体テストを適切に実施してできる限り不具合要素を修正し、後の工程につなげていくことが大切です。